民間ならではのセンター活動に期待

  

環境庁水質保全局長(平成10年6月時) 渡辺 好明

 平成10年度の通常総会の開催により土壌環境センターも3年目を迎え,組織も事業規模も大変大きくなって私共と致しましては心強い限りでございます。最近の情勢を報告することで挨拶に代えさせていただきます。

 平成10年は比較的順調な滑り出しで大変気持ちを楽にしていました。一月には当センターに非常に大きな力を発揮して頂きまして,土壌と地下水の国際ワークショップを開催し,最良の船出と思っておりましたところ,西の方で具体的には名古屋と大阪で大変な土壌汚染,地下水汚染の問題が発生しました。私自身は土壌の例えばダイオキシンの問題につきましては,冷静に暴露経路全体の中で考えれば,そんな大きなリスクはないと今まで考えておりましたが,どうも社会全体がそういうことを許容しない状況になってきております。私共も,土壌と地下水一体として,水質汚濁防止法の一部を改正して浄化命令の措置を講じましたし,昨年には地下水の環境基準も設け,行政全体としては着々と進んでいると考えている訳ですが,大変ずば抜けた高い数値が出てまいりまして,地下水にしても土壌についても,もう一度基本に立ち返っているいるな仕組みを考え直すべきだというのが世の中の大勢になってまいりました。

 大阪府能勢町のダイオキシン汚染問題につきましても,これまで土壌の強制的な法的拘束力を持つ基準というのは,日本の制度に馴染まないのではないかと考えてきましたが,とにかく何も拠り所が無いというのは議論の仕様が無いじゃないかということもございまして,5月26日に「土壌中のダイオキシン類に関する検討会」をスタートさせました。日本のダイオキシン研究の最先端にいる方々にお集まり頂いて,フリーにお話頂くことにしております。その中でも,あまり大袈裟に構えないでもう少し冷静に議論したらどうかという方と,やはり拠り所が必要だから何らかのガイドラインのようなものを作ったらどうかという方と意見が分かれておりまして,もうちょっと収敷させてゆくには時間がかかると思っております。

 皆様方ご承知のとおり,一部の外国では,土壌のダイオキシンについて非常に柔軟でかつ多様なある種のガイドラインを持っております。ドイツでは,一月のワークショップでも議論があったように,土壌汚染防止法のような制度ができてきており,土壌汚染対策が多分これから大きく取り上げられてくるんだろうと思います。

 こんなような言い方をしては顰蹙を買うかもしれませんが,土壌と地下水両方を合わせて,地下汚染という言葉を使ったら如何かと思うのです。地下汚染というのは,日本の銀行にとっての不良債権と同じ様なものでございまして,今迄隠れて見えなかったものが再開発等で次第に表面に出てくる時期に入ったと思うのです。戦後50年かかって汚染されてきたものを,これから21世紀中100年かけて少しずつ縞麗にしてゆかねばならない時代ではないかなと私自身思っています。

 一遍に表面化しますと騒ぎにもなりますし,それは科学的にみても正しくないだろうと思うのですが,発見された都度報告をし,情報を公開し,対策を打つということをコツコツと息長くやってゆく,そういう時代に入ったのだろうと思います。そのための拠り所というのは何らかの形で必要ではないかと私自身は認識致しております。そうなりますと国だけで全てやるというわけには行きません。もちろん,システムの制度自身は国が定めるべき事柄ではありますが,どのように調査したら良いか,どのように分析したら良いか,どういう対策をやったら良いか,またその対策がどうしたらコスト的に安くかつ効果的に済むかということを民間の方々の英知を集めてやらなければならない時期にきたと思います。そういう意味で,このセンターに対する私達行政もしくは国民の期待は非常に大きいものがございます。逆にいいますと,俗にいうビジネスチャンスもあるということで,大いに仕事をして頂いて大いにお助け頂きたいと思っております。

 確かに有機塩素系の土壌や地下水の汚染問題についてはかなりいろいろな課題がある訳ですが,それ以外に低濃度で長期間暴露されて影響を及ぼすという環境ホルモンの問題も,これから益々大きく取り上げられ対策を打つべき時期も近づいていると思いますので,その点でも,センターが公益法人として,3年目というちょうど安定をし拡大発展をする時期を迎えられているということは私共として心強い限りでございます。

 是非,今後の対策を実施するにあたって,技術の開発普及その他民間でなければ,また競争を通じてコストが下がって行く,そういうプロセスでなければ現実的なものになることも難しいことがいっぱいございますので,どうかご支援を賜りたいと思っております。

 私共の近況ばかり報告申し上げましたが,センターが今後益々ご発展されその礎が強くなって行きますことを切望いたしまして,挨拶に代えさせて頂きます。

 (編者註:渡辺好明局長は平成10年7月 農林水産省 構造改善局長へ転任されました)