環境省新年挨拶

柴垣 泰介
 環境省 水・大気環境局
 土壌環境課長
 柴垣 泰介

 プロフィール
   昭和32年生まれ
   東京都出身
   早稲田大学政治経済学部卒
   平成22年7月1日より現職

  新年明けましておめでとうございます。会員の皆様におかれましては、平素より土壌環境行政の推進に格別のご支援とご協力をいただいておりますことに、年頭に当たりまして改めて厚く御礼申し上げます。
  昨年は、4月に改正土壌汚染対策法が施行されるという土壌環境行政において大きな動きの年でした。この改正法の施行に向けては、会員の専門家の皆様にも参画いただき、土壌汚染の調査や措置などについての検討が精力的に行われ、それらのとりあえずの集大成が7月にガイドライン(暫定版)として公表されました。これにつきましては現在も暫定版の文字を外すべく、積み残しの課題や施行後の新たな問題点などについて更なる検討が進められています。年末には指定調査機関の技術管理者の初めての国家試験が実施されました。これらの中にも土壌環境センターのこれまでの活動実績などが活かされているものと思います。
  この改正土壌汚染対策法は、力技とも言えるような大きな内容を含んだものとなったことから、制度の施行運用者である地方公共団体をはじめ関係者に重い実務的責務を要請するとともに、それら運用経験の蓄積による制度的な成熟が求められるものとなっているといえます。そのため、現時点で早くもその円滑な施行のための調整などが必要な部分も見えてきています。
  自然的原因による土壌汚染を法の対象に組み込んだことは、改正法で新たに導入された汚染土壌の搬出、処理等の規制の実効性を確保し、汚染の拡散を防いでいく上においては、自然的原因の汚染を他と区別する理由がないことによるものです。このことは中央環境審議会の答申を踏まえて施行通知に明記し、さらに、このために自然的原因による汚染地域は形質変更時要届出区域に原則指定することとし、汚染の除去等の措置は求められないものとしています。しかしながら、区域名のごとく形質変更時には届出等の規制がかかるものであり、場合によっては汚染土壌の搬出を伴わない開発行為も制限されるといったことにもなりかねない運用要素があるといえます。この点は、前述の中央環境審議会の答申段階では特例区域の指定が検討されていた海面埋立地などとともに、届出区域の中でも他と区別して取り扱えるような制度の施行運用上の配慮や工夫が検討されるべきものと思われます。
  このように、土壌汚染対策法は、種々の土地開発や不動産取引などとも密接に関連し、社会的な影響の大きい法制度でもあることから、土壌汚染の環境リスク管理を社会的に定着させるという今回の改正目的を踏まえつつも、過度な負担や制約は軽減していくことが必要となるものであり、このことは円滑な法施行や制度の適切な運用の上での大きな課題と認識しています。
  新たな年を迎え、会員の皆様の専門的な知恵と経験に裏打ちされたご支援とご協力がますます必要となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。