改正土壌汚染対策法の施行に当たって

笠井 俊彦
 環境省 水・大気環境局 
 土壌環境課長
 笠井 俊彦
 

  改正土壌汚染対策法が本年4月1日から施行されました。昨年の4月17日に成立、同月24日に公布され、7月29日に中央環境審議会の土壌制度小委員会から、施行に向けての細目についての答申をいただいておりましたが、まずは、関係省令の公布が本年2月26日と大変遅くなったことについて、お詫び申し上げます。かなり大きな改正ですので、特に、地方自治体の皆様には申し訳なく思います。
  さて、今回の改正の狙いは、「過剰な汚染土壌の移動の抑制」、分かりやすく言えば、「掘削除去の撲滅」です。それと裏腹の関係にあるのが、「自らの土地の汚染情報を公表してくれた人の負担は軽減しよう」、「みんなでなろう届出区域」です。
  土壌汚染が見つかれば、どこかに持って行ってきれいにしましたという事例が多かったようですが、土壌汚染の多くは、そこに置いておくだけなら何ら問題がなく、そこから移動させるがために、運搬の途中でどこか行ってしまったり、持ち込んだ先で問題を起こしたりしています。それをキチンと管理しないといけないということで、搬出の際の届出の仕組みを作り、処理業を許可制にし、管理票も義務化をし、運搬の基準は実際に運搬する人が遵守しなければキチンと対応するように措置命令がかけられるようになりました。まさに、「見つかった」が問題ではなく、「どこにあるのか分からなくなった」が問題なのです。
  今回の改正では、都道府県知事等(政令市の市長を含む)は、基準に適合しない土地について、健康被害のおそれがあれば必要な措置を要措置区域の公示と併せて指示できるようになりました。指示する措置は、土壌と直接接する砂場のような利用の場合だけ掘削除去を認めていますが、それ以外の場合は直接暴露については盛り土、地下水摂取については封じ込めを指示することとしています。なお、改正後の法8条は、指示措置に要する費用の限度において、措置を講じた土地の所有者等は汚染原因者に請求できるとしています。
  要措置区域の指定の基準となる、「健康被害のおそれ」については、改正前の措置命令と同じく、(1)一般人の立入がある場合と(2)その土地の周辺で地下水が飲用されている場合としています。
  とにかく、汚染土壌をあんまり勝手に動かすことはやめて欲しい、ということで、健康被害のおそれがあれば対策をやってもらうが、なければそのまま置いておいてもらって、形質変更するときに注意をして頂ければ良いということで、届出だけでいい区域を作りました。届出区域は、ある意味で、摂取の遮断が確保されている区域です。
  土壌を動かすときに、キチンと規制を守ってもらうことが大切なので、自ら規制に服するつもりのある人は、調査の一部を省略しても良いことにして、土壌を持ち出す時に省略した部分を追完してもらえば良いようにしました。
  どんなに立派な搬出規制があっても規制がかかる区域が限られていたのでは意味がありません。自主的な調査が8割以上、法律に基づく調査が2%しかない。現在40倍以上行われている自主調査をキチンと行政に評価してもらい、台帳に載せてみんなの共有の情報にする。台帳に載っていなければ行政が全然知らない土地ですよ、ということになるように、自主申請の仕組みも設けてあります。また、一定規模以上の土地の形質変更をするのであれば、土壌を動かすことになるので、調査をしてもらうことになっています。汚染土壌が見つかることは良いことで、それをみんなの共有の情報として持つことで、みんなで環境リスクを管理・低減していこうというのが今回の改正の狙いです。
  汚染土壌が見つかったら、まず除去してから、自治体に報告しようというのは大きな間違いで、見つかったところで直ちに自治体に報告し、自治体の指示を受けて、台帳に載せてください。台帳に載っていないような土地は売買したら危ない土地だという認識が広がっていけば、改正法は実効をあげると思います。