改正土壌汚染対策法の概要

1.はじめに
    平成20年12月19日に提出された中央環境審議会の「今後の土壌汚染対策の在り方」答申を受け、環境省は平成21年3月3日に「土壌汚染対策法の一部を改正する法律案」を第171回通常国会に提出し、同年4月17日に可決成立、4月24日に「土壌汚染対策法の一部を改正する法律(以降、改正法という)」が公布されました。その後、平成21年10月15日から平成22年2月26日にかけて、関連する政令ならびに省令類が公布され、いよいよ平成22年4月1日には改正法が施行される運びとなりました。
  ここでは、環境省によって開催された「改正法に関する指定調査機関向け説明会」の講演内容に基づき、改正法の概要についてまとめます。

2.法改正の背景
    平成15年2月15日の土壌汚染対策法施行以来6年が経過し、法の施行によっていくつかの課題が明らかになってきました。
    (1):法に基づかない土壌汚染の発見の増加
        環境省が指定調査機関(1,662社)を対象に実施した平成18年度の受注調査結果によれば、調査総件数15,208件のうち、法律に基づく調査はわずかに2%、条例・要綱による調査が11%、残りの87%は自主調査であり、発見された汚染土壌の適正管理への不安が露呈することになりました。
    (2):土壌掘削除去工法の偏重
        平成19年度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例に関する調査結果によれば、平成3年から19年度に実施された4,929件の累計対策工事のうち、2,407件(48.8%)が掘削除去、次いで909件(18.4%)が原位置浄化、他の封じ込め・不溶化、盛土・舗装、立入禁止などの対策措置については、合わせて32.8%にとどまりました。このように、法が求めている対策と実際の対策とは大きく乖離しており、いわばしなくてもよい汚染土壌の移動が多発していることによって、環境リスクはむしろ拡大しているという問題が浮きぼりとなりました。また、対策費用が高額になることで、土地所有者等の過剰な負担の発生にもつながっています。
    (3):汚染土壌の不適正処理による汚染の拡大
        汚染土壌の搬出に伴い、汚染土壌の不適正処理事例が、首都圏を中心に数多く確認されており、掘削除去偏重による環境リスクの拡大が明らかになっています。

3.改正土壌汚染対策法のポイント
    改正法のポイントとしては、次の4点があげられます。
    (1):土壌汚染状況の把握のための制度の拡充
        一定規模(3,000m2)以上の土地であって土壌汚染のおそれのある土地の
   形質の変更時における都道府県知事による土壌汚染の調査命令
  自主調査において土壌汚染が判明した場合、土地所有者等の申請に基づ
   き規制対象区域として指定し、適切に管理
  都道府県知事による土壌汚染に関する情報の収集、整理、保存及び提供
   等に関する努力義務
    (2):規制対象区域の分類等による講ずべき措置の内容の明確化
       都道府県知事は、規制対象区域の指定にあたり「要措置区域」(盛土・封じ込め等の措置が必要な区域)と「形質変更時要届出区域」(土地の形質の変更時に届出が必要な区域)とに分類し、必要な対策を明確にすることになります。
    (3):搬出土壌の適正処理の確保
        要措置区域等内の土壌の区域外への搬出の規制(罰則あり)
  搬出土壌の処理業についての許可制度の新設
  搬出土壌に関する管理票の交付・保存の義務
    (4):指定調査機関の信頼性の向上
        指定の更新制度の導入(5年ごとにその更新を受けなければ指定失効)
  技術管理者の設置、監督義務の新設(技術管理者は環境省実施の試験に
   合格した者)
  指定調査機関の指定基準の厳格化(技術管理者の適正配置)
  業務規定内容の充実及び帳簿の備付け義務の新設等

広報分科会