環境省田中課長就任の挨拶

田中 聡志
 環境省 水・大気環境局
 土壌環境課長
 田中 聡志
プロフィール
 昭和38年生まれ
 香川県出身
 京都大学法学部卒
 平成21年7月15日より現職
  7月15日付けで土壌環境課長に就任しました田中です。社団法人土壌環境センターの会員及び関係者の皆様には、日頃から土壌汚染対策の推進にご尽力いただいていることについて、厚くお礼申しあげます。
  土壌汚染対策法が平成15年に施行されてから、はや6年が経過しました。当時、水環境部企画課の総括補佐として、法案提出に向けた作業のお手伝いをしていたことを懐かしく思い出します。法律の制定は、長年の課題であった市街地土壌汚染問題について、調査、対策のルールを制度化するということで、大きな一歩でした。しかし、土壌汚染に特有の問題もあり、制度化には様々な難しい課題がありました。なかでも、土地所有者と汚染原因者の位置付けや、原因者不在の場合の負担のあり方などは、制度構築の最後の局面まで議論が紛糾していました。180度利害が異なるセクターの対立がいくつもあり、最後の瞬間に法案が成立したことは、それでも制度を作ろうという社会の合意があったからこそだったと思います。
  その後、法律に基づき、あるいは法律の外でも土壌汚染の調査、対策が進展していることは、この問題に対する社会の関心の高まりを改めて印象付けるものでしょう。一方で、対策の進展に伴って、いくつかの課題も指摘されています。法律に基づかない土壌汚染の調査、対策が多いこと、ともすれば掘削除去が行われる傾向にあること、搬出土壌が必ずしも適切に処理されていないことなどです。今般の土壌汚染対策法の改正では、こういった点を中心に、制定時からの課題も含めて見直しが行われました。土壌汚染対策が新たな局面に入りつつあるものだと思います。
  改正土壌汚染対策法は、10月末までに一部が施行され、遅くとも来年4月からは本格施行となります。法律に基づき、具体的な基準、手続きなどを定める必要があることから、中央環境審議会で審議していただき、政省令事項の素案について答申を頂きました。現在、政省令等の条文化作業を急いでいるところです。また、許可、届出などの新たな事務がスムーズに動くよう、体制整備等必要な準備を進める必要があります。調査、対策に携わる皆様の更なるご協力を改めてお願いします。
  改正法の円滑な施行が目の前の課題ですが、土壌環境をめぐっては、他にもいろいろな課題があります。カドミウムの食品規格基準の強化に伴う農用地土壌汚染対策の見直し、いくつかの物質について水質基準設定の動きへの対応、ダイオキシン汚染土壌の処理、更には、わが国の経験を生かした国際協力の推進など、一つ一つが重要な問題です。
  こうした課題に的確に対応していくためには、現場で実際に土壌汚染問題に対処されている専門家の皆様の知見と経験が何よりも重要です。皆様の御助言と御指導を頂きつつ、施策を更に強化していきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。