環境省雑感 長崎税関

伊藤 哲夫
環境省 水環境担当審議官

伊藤 哲夫
プロフィール
昭和29年生まれ
富山県出身
京都大学経済学部卒業
昭和54年 環境庁入庁
平成18年 財務省長崎税関長
平成20年7月より現職

  東京より博多、博多より長崎、長崎より五島、と言った人がいる。魚の美味さについてである。長崎と五島は、私が昨年七月まで二年間出向させていただいた長崎税関の管轄地である。我が国には、九つの税関があり、長崎税関は九州の西半分、北は長崎県の平戸島から南は鹿児島県の与論島までを管轄している。自然も豊かで、昭和九年に日本で初めて指定された国立公園の三箇所のうちの二箇所(雲仙と霧島)を有し、世界自然遺産に登録されている屋久島もあるが、私が一番、と思うのは、長崎県北西部に位置する西海国立公園、その中でもとりわけ五島エリアである。訪ねる前は離島の寂しいイメージを持っていたが、全く違う。島全体がとにかく明るい。そして、何と言っても大瀬崎。福江島の最西端にあるあの雄大な断崖と青い海原を見たとき、私は言葉を失ってしまった。環境省も長崎県も、もっともっと五島に目を向けた方がよいと思った。

  税関は、物の動きの面で世界との接点にあり、その役割は大きく言って三つある。第一は、輸入品に係る関税や消費税等の適切・公平な徴収、第二は、通関手続きの利便性の向上等による貿易の円滑な推進、第三は覚せい剤や拳銃などの社会悪物品等の密輸の阻止である。地道ではあるが国の屋台骨を支える仕事である。税関の究極の目的は、国民の安全を守り健全な経済の発展を図ることであり、環境省と同じだ。有害廃棄物や希少な野生動植物の国際的な移動を水際で規制しているのも税関であり、環境行政の重要な実施部隊でもある。日本の税関がしっかりすることが、日本のみならず世界の人々の安全や健全な世界経済の発展に大きく貢献する。この点も日本の環境省と瓜二つである。

  長崎税関の最大の課題は、覚せい剤や大麻などの不正薬物や拳銃などの社会悪物品が海上から密輸されることを断固として阻止することだ。管内やその周辺には要注意の海上ルートが数多くあり、検挙した例も多い。しかし、私の赴任期間中の平成十九年四月、当時の長崎市長の伊藤一長氏が長崎税関の本関に程近い長崎駅前で銃弾に倒れた。拳銃の密輸は海上ルートで行われる可能性がかなりある。海の税関を代表する長崎税関として深刻に受け止めた。

  長崎税関の取り締まりの中心は三艇の監視艇である。とりわけ夜間、海上でそして陸上で目を光らせる。寒い日も暑い日も波が高い日も。その苦労を知ることが出来たことが私にとって最大の賜であった。環境省の仕事で消極的になってしまうようなことがあれば罰が当たる、と思うのである。