環 境 省 新 年 挨 拶

笠井 俊彦
 環境省 水・大気環境局 
 土壌環境課長
 笠井 俊彦
プロフィール
昭和35年生まれ
岐阜県出身
東京大学法学部卒業
平成20年7月14日より現職

  新年あけましておめでとうございます。謹んで新春のお慶びを申し上げます。旧年中は、土壌環境行政の推進に関し、格別のご支援、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
  土壌汚染対策法が施行されてから5年が経過しました。環境省では、昨年5月、環境大臣から中央環境審議会会長に対して、今後の土壌汚染対策の在り方について諮問を行い、同審議会土壌農薬部会に設置された土壌制度小委員会において審議を行ってきました。本稿を執筆している時点では、土壌制度小委員会においてまさに審議中の状況であり、「今後の土壌汚染対策の在り方について(案)」についてパブリックコメントによる意見募集を行っている段階ですが、その主な概要について以下に三点紹介します。
  まず一つ目は、調査の契機についてです。現在の法律では有害物質使用特定施設の廃止時等に土壌汚染の調査を義務づけていますが、実際には土地売買等の際の自主的な調査において土壌汚染が判明することが多いことが明らかになっています。自主的な調査の実施は、土壌汚染の把握の観点からも重要であるため、その良さを活かして推進しながら、土壌汚染による環境リスクの管理・低減を進めていくため、自主的な調査を有効に活用すべきとされています。また、一定規模以上の土地の形質変更についても、土地利用の履歴等を調べて、土壌汚染の可能性が高いと認める場合には、形質変更を行う部分について土壌汚染調査を行うこととすべきであるとされています。
  二つ目は、サイトごとの汚染状況に応じた合理的な対策の促進方策についてです。現在の指定区域は、搬出等の土地の形質変更の際に注意しなければならない区域と対策が必要な区域を一体として扱っていますが、合理的な対策を促進するため、汚染の状況、健康被害のおそれ(一般人の立ち入りや地下水の飲用の可能性)の有無に応じて、区域を分類するとともに、必要な対策を明確化するべきであるとされています。
  三つ目は、搬出汚染土壌の適正処理を担保するための制度の充実についてです。汚染土壌の搬出は、適切な処理がなされなければ、有害物質が別の場所に移るに過ぎず、かえって汚染土壌の拡散のおそれがあることから、抑制すべきことを明確に位置づけるべき。また、搬出が抑制されるよう、原位置でのリスク低減措置(オンサイト処理)の技術開発・普及を推進すべき。やむを得ず搬出される汚染土壌については、運搬・処分などの基準を定め、搬出汚染土壌管理票も義務化するとともに、不適正な処理がなされた場合の是正命令を設けるべきとされています。なお、適正管理のための規制強化が空振りにならないためにも、自主調査の活用等による対象区域の拡大が必要であるとされています。
  今後は、審議会答申を踏まえて、必要な制度改正に取り組んでいきます。引き続き、皆様の土壌環境行政に対するご理解とご協力をいただきますようお願いします。最後になりましたが、皆様の益々のご発展とご健勝をお祈り申し上げまして、新年のご挨拶とします。