油汚染対策ガイドラインについて





環境省水・大気環境局 土壌環境課長
鏑木 儀郎
鏑木 儀郎 プロフィール
1955年 生まれ    
     京都大学工学部卒、
     英国ロンドン大学修士
     (インペリアルカレッジ環境技術センター)
2004年7月 現職に就任

  「油汚染対策ガイドライン―鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題への土地所有者等による対応の考え方―」ができました。このガイドラインは、本年3月31日に開催された中央環境審議会土壌農薬部会において、同部会土壌汚染技術基準等専門委員会から報告された報告書を、当課のガイドラインとして取り扱うことにしたものです。現在、環境省では(社)土壌環境センターと共催で、(社)日本経済団体連合会と石油連盟との後援を頂いて、全国7カ所で説明会を開いてガイドラインの考え方や内容を普及しようとしています。このガイドラインは197ページにもわたる大部なガイドラインであり、これを活用して取組を進めて頂く土地の所有者などの皆さんにわかりやすいものとなっているとともに、調査や対策の事業を受注する事業者の皆さん向けにも技術資料を備えたものとなっています。
  このガイドラインは第一編と第二編の構成となっています。ガイドラインを活用する場面では、第一編がガイドライン全体の考え方を取りまとめたコアですので、まずはこの第一編をよく読みこなして頂いたうえで第二編をお読み頂きたいと思います。
  この原稿を書いている時点で、すでに上述の説明会を三会場で開催しました。説明後の参加者の質問では、「このガイドラインは規制ではなく、何らかの基準値が定められているものでもなく、そもそも油汚染対策は各現場の実情に応じた対応が必要なものである。」、というガイドラインの考え方の説明後に、「規制がなければ土地の所有者等は何の対応もしないのではないか」、という質問がよく出ます。規制でなければ、また基準値がなければ対応しないでも誰にも処罰されることもないから、何もしないのではないか、という訳です。
  昨今、CSRの推進とか、適正な内容の企業の自主的な取組をしやすくするための環境作りとかの、規制によらない環境管理の促進方策が考案され実施されています。
  このガイドラインでは、油汚染問題に直面した土地の所有者等が、それを解決したいというときに参考となる考え方や技術的な資料を提供しているのですから、もし質問された方が、規制されなければ何もやらないという土地所有者等をご心配なら、まずその土地所有者等にはガイドラインの基本的な考え方を理解して頂かない限り、ガイドラインに対する欲求不満がたまっちゃうのかもしれません。
  是非多くの皆さんにガイドラインの第一編をお読み頂きたいし、その前にガイドライン冒頭にある「このガイドラインをお読みになる方に」という緒言をお読み頂きたいと思います。この緒言も中央環境審議会の専門委員会報告の一部であり、ガイドラインの趣旨・目的を端的に示していますから。専門委員会の先生方には、誰にもわかりやすいものとする、誤解が生じにくいものとするという基本線で、積極的なご議論を頂戴した成果がこの緒言を含むガイドラインであり、本件の行政の責任課長として心から感謝申し上げます。
  ところで、このガイドラインは環境省が土壌環境センターに委託して行ってきた何年にもわたる技術的な調査検討の成果を集大成したものでもあります。多くの技術者が費やした様々な努力と知恵と時間が詰まったものでもあります。この小文を書かせて頂く機会に、是非、センターの関係者の皆様に対して、これまでの長年のご努力と熱意に感謝申し上げたいと思います。また、このガイドライン作成作業には、石油連盟及び加盟各企業の皆様に多くの知恵と知識と示唆と、それにもまして多くの時間を割いていただきました。なんと言っても、実際に現場で毎日油とつきあい、自ら技術的な研究・検討を進められている国際的な企業の技術者の皆様ですから、そのお知恵を頂きながら一緒に議論を進められたおかげでこのガイドラインができあがったと申し上げて過言ではありません。
  なお、環境省では、今年度から二年間かけて、ガイドラインのフォローアップ事業を進めます。センター会員の皆様、石油連盟の皆様にも、本ガイドラインの目的が達成できるように、今後とも引き続きよろしくお願い致します。