10周年記念行事報告

  (社)土壌環境センター創立10周年記念行事が、平成18年4月14日(金)に、東京大手町の経団連会館で開催されました。行事は記念式典・記念講演と記念パーティーの3部構成で行なわれ、前半の式典と講演会には約300名が、パーティーには約400名が参加しました。

記 念 式 典
  記念式典は14:00から女性司会者の進行で始まり、まず当センターの野村会長から主催者としての挨拶がありました。次いで来賓を代表して、
(社)土壌環境センター 創立10周年
受付の様子受付の様子
環境省水・大気環境局長の竹本和彦様および日本環境協会理事長の加藤陸美様より祝辞をいただきました。また、10周年史編纂部会の佐藤部会長の説明で、「土壌環境センターの10年を振り返って」
と題して映像で10年間が紹介されました。

記 念 講 演
  15:00からは記念講演が始まりました。最初
環境省 水・大気環境局 竹本和彦局長 環境省 水・大気環境局
竹本和彦局長
の講演者は作家の石川英輔先生で、「エネルギー  江戸と現代」の演題で講演をいただきました。石川氏は白いジャケットに渋色のシャツ・ネクタイ姿で登場し、江戸時代と現代のエネルギー消費量の比較を具体的な数字を挙げながら、軽妙な語り口でお話されました。現代は人1人当たり1日に約125,000kcalのエネルギーを消費し、人は50%は石油でできている勘定になるが、江戸時代の人は100%太陽エネルギーで動いていたために計算の
(財)日本環境協会
加藤陸美理事長
しようがなく、エネルギー消費量は限りなく“0”に近い。それでは江戸時代の人は気の毒だったかといえば、小中学生が生活習慣病やアレルギーに冒されている現代の方が、よっぽど気の毒である。
  カタカナ英語で表される言葉は、必ずと言っていいほど成功しない。リサイクルもそのひとつで、化石燃料を消費しているうちはエントロピーが増大することになり、うまくいかない。エネルギー消費量を
(社)土壌環境センター 野村哲也会長 (社)土壌環境センター
野村哲也会長
減らさない限り、いずれはどうしようもない事態となる。なんと筋の悪い文明を選んでしまったことか!という警告で締めくくられました。「講演をすると、それではどうすればいいのかとよく聞かれるが、私にはそんなことはわかりません。ただ、こうして事実を皆さんに伝えるのみです。」という言葉も印象に残りました。

  二番目の講演は東京大学名誉教授の養老孟司先生で、演題は「環境問題のとらえ方」でした。講演するときの私の癖です、とおっしゃいながらマイクを片手に演台の周りを歩き回り、時にホワイトボードを使いながらのエネルギッシュな講演となりました。ある外国のベストセラー作家との会話の中で、文化的な違いからどうしても通じないことがあったという導入部で、「バイオダイバーシティ」という語を紹介されました。生物多様性と訳すそうですが、この訳語自体が“客観性”を重視する西洋型の生物の方に物を預けた言い方で、日本型ならば“見る目”ということで、物を自分の側で捉える。 つまり、どんなに客観的に見てもその裏には自分の見る目があり、個性尊重と言いながら人を見る目がなければ皆同じに見えてしまう、というやや哲学的な展開となりました。環境もこれと同じで、客観性だけでは捉えき

石川英輔先生
石川英輔 先生

養老孟司先生
養老孟司 先生
れない。自然は人の意識が造ったものではないので、環境問題では意識が「ああすればこうなる」と予測・制御する以外の展開が必ず生じてくる。人間が自然をコントロールできると考えるのは誤りである、と喝破されました。さらに、今の学生に質問すると「そういうものだと思った」という答えが返ってくることが多く、何故?と考えることをしない。考えない方が楽であり、都会では若い人が楽しそうに見える。でも若いうちはいつも悩んでいなくてはだめで、頭をそういう居心地の悪い状態に置いておくことで、いつかは飛躍が得られるという、ご自分の経験に基づく(?)思考方法論なども披瀝されました。最後に、意識というのは物を同じとみる世界で、人間の特徴であり、意識の代表が言語である。これと対立的な語が感性で、物の違いを感じ取るという動物の世界である、というお話で時間となりました。
  最後は、当センターの大林専務理事がお礼のご挨拶で締めくくられました。

竹下亘環境大臣政務官
竹下亘 環境大臣政務官
記 念 パーティー
  17:45から始まった記念パーティーは、400人を収容できる大きなパーティー会場が人で埋まってしまうほどの大盛況となりました。また、来賓の方々も竹下亘環境大臣政務官を初めとして、現役の環境省関係者に加え、歴代の関係者にも大勢の方々にご出席をいただきました。
  センターの猪瀬副会長の挨拶で始まり、竹下政務官からのご祝辞のあと、大野副会長の乾杯の音頭で、祝宴はいよいよ佳境に入りました。展示された8枚の写真パネルの前にはかつてを
懐かしむ面々が集い、また会場のいたる所で久しぶりの旧交を温める輪が作られ、予定されていた2時間は瞬く間に過ぎ去りました。最後に渡邊常務理事の中締めで、記念パーティーはつつがなく閉会となりました。