〜 環 境 省 雑 感 〜





環境省水・大気環境局
地下水・地盤環境室長
尾川 毅
尾川 毅 プロフィール
1961年生まれ
1985年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
      (都市工学専攻)
1985年 厚生省入省
      環境庁、国土庁、環境省、厚生労働省、農林
      水産省において、水質保全、環境研究技術、
      水道行政、水資源開発行政等を担当
2004年 環境省大臣官房環境情報室長
2005年7月 現職に就任

  昨年7月から地下水・地盤環境室長を拝命しています。(社)土壌環境センターの会員の皆様にはいつもたいへんお世話になっています。この場をお借りしてお礼申し上げます。
  厚生省・環境庁に採用されて20年以上が経過しましたが、一年生の時分に地下水汚染調査結果の集計に携わっていたことを昨日のことのように思い出します。当時は、昭和57・58年の環境庁調査で有機塩素化合物による全国的な汚染の広がりが顕在化しつつありました。しかしながら、水質汚濁防止法には地下水保全の規定がなく、暫定指導指針に基づいて対応をしていました。
  往事を知る者としては、現在の水質汚濁防止法に基づく地下浸透規制、地下水質の常時監視、事業者等による自主的な検査・公表、土壌汚染対策法等に基づく汚染対策の実施という一連の体制は隔世の感があります。ここまでの仕組みを形作られてきた関係者の御労苦にあらためて敬意を表する次第です。
  ひるがえって汚染の状況を見てみますと、土壌汚染対策法の制定・施行もあり、事業者の自主調査や行政の調査によって毎年300件前後の土壌汚染の超過事例が新たに判明しています。汚染判明後は、原因者究明、措置の実施という流れができあがっています。
  こうしてみると、土壌汚染対策法は、事業場由来の地下水汚染の未然防止や汚染地下水の浄化に極めて有効に機能しているといえます。制度の着実な施行と適切なフィードバックにより、現在あるシステムをいかに効率よく的確に運用していくかが課題と考えています。
  一度汚染された環境を修復することがたいへんであることはわかっているはずなのですが、最近は官民ともに日常の環境管理の重要性への認識がルーズになっているように感じています。事業場の監視・指導を行ってきた自治体の環境管理部門では、熟練技術職員の退職に伴う技術の継承が課題です。行政の基本的な役割であるモニタリングにも、地方自治体の財政事情や環境監視に係る国の補助制度の廃止による影響が懸念されます。効率化の鍵を握る行政の情報化も必ずしも十分ではありません。
  土壌・地下水汚染対策がより一層推進されるには、社会情勢の変化に対応した官民の適切な役割分担を維持していくことが必要です。私としても事業者側・行政側双方にとっての最適なソリューションが得られるよう、これからも力を尽くしてまいりたいと考えておりますので関係者の方々の御協力をこれからもよろしくお願いします。