広報分科会よりのメッセージ



  死者107人負傷者549人という、鉄道事故史上屈指の大惨事であったJR福知山線脱線事故(4月25日)から、早くも2ヶ月余りが過ぎました。事故調査完了を待って事故区間でも6月には復旧作業が開始され、6月19日には運転が再開されています。しかし、被害にあった方々には肉体的にも、そして特に精神的に大きなダメージが残されていることが報道されています。
  脱線の直接の原因については諸説あり、現時点では未だ不明ですが、現場のカーブ区間での大幅な制限速度超過が大きく影響していることは間違いないようです。なぜ運転手が異常な速度で列車を走行させていたのか?
運転手が亡くなられていることから推測にとどまりますが、警察や航空・鉄道事故調査委員会の調査結果からは、運転手が直前のオーバーラン等から生じたダイヤの遅れを、必死に取り戻そうとしていた状況が浮かび上がってきます。
  競合する路線の多い関西の鉄道事情、そしてその競争に勝つことを優先したJR西日本の経営姿勢が、余裕のないダイヤを生み、運転手に秒単位での列車の定時走行を義務付けていたのでしょう。さらに、1分1秒でも早くそして正確なダイヤを求める私たち利用者が、今回の大惨事の最大の原因となっているような気がします。
  常に勤勉で全員が同じ方向を向きやすいというのは、日本人の特性のひとつといえます。近年ようやく多様な価値観というものが認知されつつありますが、5分や10分の遅れはなんでもない、という個々のゆとりの気持ちがより大切になるのではないでしょうか。また、このような余裕が環境問題全般を解決に導くひとつのキーワードでもあるように思います。

(広報・教育委員会 広報分科会)