環境庁だより

地下水保全行政の新たな展開



環境庁水質保全局企画課地下水・地球環境室室長補佐 油本幸夫

 地下水は、全国3000万人の飲用に供されているほか、農業用水や工業用水、養魚用水など幅広く用いられています。近年では、震災時や渇水時の緊急用の水源としてもその価値が見直されている貴重な水源でもあります。

また地下水は、水環境の重要な要素であると同時に、土壌等とともに地盤環境を構成し、過剰な揚水は地盤沈下の原因となるなど多くの環境要因に密接に関連しています。平成6年に策定した環境基本計画では、環境政策の長期的目標の1つとして「循環」をあげているが、水の循環を考えると地下水は量・質の両面で大きな役割を果たしています。

しかしながら、現在、地下水の有害物質による汚染が各地で顕在化するとともに、地下水函養量の減少による湧水の枯渇や地下水位低下による地盤沈下が進行している地域も見られます。

このような状況を踏まえ、環境庁では地下水の水質保全関連業務と、企画課で行っていた地盤沈下防止のための地下水採取規制等地盤環境業務を継承しました。スタッフは、室長のほか地盤班3名(室長補佐に係長2名)、地下水班2名(室長補佐に係長1名)、事務補佐員1名の総勢7名です。

室の主な事業について述べてみますと、地下水関係では地下水質の常時監視の推進業務のほか、平成5年度から取り組んできている汚染地下水の浄化技術の開発・促進を図るとともに、さらに本年度からはこれまで開発、実用化された浄化技術を応用して小規模な汚染サイトにも適用できるよう簡易で経済的な浄化装置の開発、普及を目的とした「地下水浄化汎用装置開発普及調査事業」を推進しています。このほか去る5月14日に中央環境審議会に「水質汚染に係る人の健康の保護に関する環境基準の追加等について」を諮問し、公共用水域とあわせて地下水の環境基準項目の追加を検討していくことにしています。

地盤関係としては、従来からの地盤沈下事業の促進を図るほか、本年度から非常時における水源の確保、地域の顔となるコミュニティの場の復活等の観点から市町村が実施する井戸・湧水復活再生事業に対して補助を行うことにしています。この事業は、健全な水循環の確保により水環境の復活、生態系や緑の保護、更には地下水保全の啓蒙促進といった新しい視点からの事業であり、全国の地方自治体からの反響も大きいところであります。

今後の地下水・地盤環境行政は、地下水・地盤環境室が新たに設置されたことに伴い、地下水の水量と水質の両面から総合的に推進されることになりましたが、具体的には、流域に即した水循環の診断・評価手法の確立、回復保全計画指針の策定、さらには汚染地下水の浄化対策の積極的な推進のほかに、地下水函養域における水質保全や負荷ほ低減等未然防止対策が主要検討課題となってくるものと考えます。

汚染を未然に防止し適正に利用すれば持続可能な資質である地下水、また一度破壊されると回復の困難な地盤環境を将来の世代に健全は姿で引き継ぐことができるよう、関係各位の理解と協力をお願いします。

 <環境庁水質保全局企画課地下水・地盤環境室>

       室長     地盤班(補佐+係長2名)

              地下水班(補佐+係長1名) 他事務員1名