巻頭言

(社)土壌環境センター会長 岡安 誠
 先般、デンバーサミットに引き続き国連環境開発特別総会が開催された。

 1992年のリオの地球サミットから5年、地球との共生を目指す対策がどこまで進んだかを問い直し、今後優先的に取り組むべき課題とその手法を方向付けるのが狙いだった。地球サミットで採択された行動計画「アジュエンダ21」実現のため、各国が積極的に取り組むことは再確認されたが、色々な問題を残す結果となった。参加国についても政府首脳の参加は前回の108ケ国から58ケ国と関心が低くなったと云える。地球温暖化についても、1992年時に比べ後退している認識せざるを得なかった。温室効果ガス削減の共通の目標値について本年12月の京都会議で設定を目指すことになるが、特に開発途上国の取り組みに関し減少傾向にある各国政府の途上国援助(ODA)などの資金問題等解決すべき課題も多い。地球レベルでの環境問題へ取り組みの難しさを改めて痛感した次第である。

 我が国の「環境基本計画」における長期目標として、環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現を目指している。即ち“大気環境、水資源、土壌環境への負荷の少ない製品の利用、適正なリサイクル、廃棄物の適性な処理、新エネルギーや再生可能エネルギーの開発利用の推進等により、経済社会システムにおける物質の循環をできる限り確保する。”と展開している。しかし現状の先進国における大量生産、大量消費、大量廃棄の社会経済活動を考える時、このまま推進すれば、持続的な発展は極めて困難といわざるを得ない。

 この危機を乗り切るためには、第1に世界中の国が同じ目標とベクトルをもって積極的に取り組むこと、第2に各国は計画に従い具体的なアクションをとること、第3に各企業および国民の一人ひとりが具体的なアクションをとること等、これらのことを直に実施し移すことが肝要である。そのためには現制や経済的施策がタイミング良く効果的に実施されることが望まれる。

 環境汚染や自然破壊が高まる中、祖先から受け継いだ健全で豊かな、このすばらしい地球を次世代に継ぐのは、我々の責務であることを肝に命じたい。

 当センターも2年目を迎えるが、活動の一層の充実と基盤整備を進めて行きたい。基盤整備には2〜3年程度は要すると思われるが会員企業の皆様のご協力を得ながら着実に進める必要があると思う。

 6月23日の総会で平成9年度事業計画が承認され、9年度の活動が本格的にスタートするが、皆様の積極的な参加を得て成果があがることを期待している。各年度の活動の成果の積み重ねが当センターの設立の目的、目標を一歩ずつ達成していくものと信じている。しかしながら社会的環境の変化、国の施策の追加・修正等により、起動修正、業務拡大の必要性が生じてくると思われているので、当センターとしては、“研究開発”と“案件対応”を車の両輪として、土壌・地下水汚染対策に関連した多様な社会的ニーズに応えられるよう、研鑚に励んでいきたい。