ご挨拶

環境庁水質保全局土壌農薬課 課長補佐 藤倉 まなみ
本年4月に土壌農薬課市街地土壌対策係の担当補佐として着任した藤倉です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

土壌農薬課では、これまで、土壌問題の担当として(農用地)対策係、土壌調査係、市街地土壌対策係の3係があり、課長補佐は1名で対応してまいりましたが、組織定員の削減が厳しい中、市街地土壌汚染対策問題の重要性に鑑み、昨年度課長補佐の増員が見つめられたものです。

私は環境庁入庁以来、水質管理課で地下水、底質、酸性雨を担当し、さらに厚生省水道環境部および環境庁の(現)海洋環境・廃棄物対策室で廃棄物を担当した後、大気保全局、神奈川県鎌倉市役所を経て現在に至りますが、これまで経験した仕事の中でもいろいろな形で土壌汚染問題と関わりがありました。

最も関係の深い地下水汚染を担当したのは、昭和60年頃で、米国の調査結果を基に全国で地下水汚染実態調査を行ったところ、トリクロロエチレン等の有機塩素化学物汚染が広がっていることが判明した直後でした。当時は水質汚濁防止法上何の措置もなく、各自治体のご協力を得て地下水汚染そのもののデータ収集を行っていましたが、その後の数年分の情報の積み重ねがあって初めて水質汚濁防止法の排水の地下浸透規制、さらには平成8年水質汚濁防止法改正による回復命令の導入につながってきたものと思われます。土壌汚染についても、まず自治体のご協力を得てデータを積み重ねることが日本の環境行政の基本になていると思います。

また、あわせて担当していた底質の仕事は、熊本県の水俣湾における水銀を含む底質の**事業を環境保全上問題なく実施することでした。水俣湾をはじめとする重金属を含む底質の除去は、その多くが公共事業で行われたものでしたが、除去対策の発動の根拠となっているのは、「底質の暫定除去基準について」という環境庁水質保全局長通達であり、費用負担については「公害防止事業費事業者負担」と「公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」が適用されています。農用地の土壌汚染もこれら2法を活用しますが、対策の発動についてはご承知のとおり「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」が制定されているのに比べると、底質はユニークな仕組みといえるでしょう。

酸性雨については、水質管理課では湖沼への影響を調査し、土壌農薬課では土壌および植生に対する影響について、特に土壌の「酸性化」に対する耐性の観点から調査しています。土壌農薬課に着任して、これまでの酸性雨に係わる知見と土壌汚染の知見を統合し、土壌の持つ緩衝能と土壌中の重金属の溶出特性についてあらためて応える時期にきていると感じます。

廃棄物問題については昨今の情勢は皆さんご承知のとうりですが、ひとつだけ言及したいと思います。私は環境庁海洋環境・廃棄物対策室では有害廃棄物の越境移動に関するバーゼル条約を担当していましたが、バーゼル条約が1989年にUNEPで採択されたそもそもの発端は、1976年にイタリアのセベソの農薬工場で起きた爆発事故により生じたダイオキシン汚染土壌が、ドラム缶に封入されて保管されていたものが1982年に行方不明となり、その8ケ月後にフランスで発見されたという事件です。この事件はフランスとイタリアの外交問題に発展し、さらに先進国の有害廃棄物がアフリカなどに投棄されていることが明らかになって、地球環境問題として条約の成立に至ったのです。ここで注目したいのは、諸外国では移動する汚染土壌は廃棄物としては大きな関わりがありますが。)わが国は廃棄物処理の運用上、いろいろな経緯があって汚染土壌は廃棄物としては扱われておりませんが、諸外国の制度と比較する際、この点は留意しておく必要があると思います。

最後に、鎌倉市においては、環境問題だけでなく、産業全般及び市民生活全般に関わる部署を担当しました。その中で、様々な価値観を持つ市民の要請に応え、合意形成を図る前提として、情報公開が大変重要であると感じています。現在、自治体レベルで行政情報の公開と個人情報の保護がセットで条例化されつつありますが、国においては情報公開法も個人情報保護法もなく、ましてや民間情報については憲法上の問題もあり、難しいところです。特に土壌汚染は環境媒体としての土壌の多くが個人の私有財産ですから、不用意な情報公開には問題があります。米国には知る権利法がありますが、我が国は今般の廃棄物処理法の改正で初めて産廃処理施設設置者の情報の開示が法に明記された(実に画期的なことだと思います)ので、その運用を注視したいと思います。

こうして考えただけで、土壌汚染問題は本当に広がりのある課題だと思います。今後とも、センター会員の皆様方のお力添えをいただけますよう、よろしくお願いします。