第10回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会

  「第10回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会」が7月14日〜16日の3日間に亘り大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで開催された。
  今回の研究集会は(社)地盤工学会、日本地下水学会、
(社)日本水環境学会、(社)土壌環境センターの共同主催によるもので、他に18団体の後援を受けた。開催期間を通じ718名の参加者が集い、一般セッションの他に各国から発表者を招いた「国際セッション」の実施、企業の「機器展示」の設置を行い第10回の節目の開催にふさわしい盛大な研究集会となった。

<参加者数構成>
  参加者718名の内訳は下図の通りである。民間企業からの参加者が多くを占めるのは毎回の傾向であるが、特筆する事項として、学校関係者(大学教員、学生等)の参加が増え、参加者全体の16%を占めるに至ったことが揚げられる。
  研究集会への大学からの参加呼びかけは、おおよそ2年前から当センター内においても研究集会に対する一つの目的意識として掲げられていた。
  今回の大学からの参加数の増加は、土壌汚染の概念の一般化、近年の大学内企業の増加、国立大学法人化などの時流に後押しをうけている面もあるが、当センターとしても喜ばしい現象といえよう。
  今後とも多方面からの参加を呼びかけ、研究集会の充実を図っていきたい。

参加者数の構成

<一般セッションの研究発表>

  一般セッションにおける研究発表数は202題に上った。
  講演方法はハイブリット形式を採用している。すなわち、会場において3分間の書画カメラを用いた口頭による概要発表を行い、次いで、別室のポスターセッション会場において1時間の質疑応答を行う方法である。
  充実した質疑応答が発表演者と質問者の間で出来る反面、演者は発表原稿、要旨集原稿、ポスターの作成はもとより、長時間の質問に答えるための相当な下準備が必要になったことと推察される。それを反映してか、発表内容は完成度の高い報告が目立った。
  発表分野は、
  1.地下水・土壌汚染の実態・原因・経路に関する調査・検討
  2.汚染物質移動の解析・観測、汚染の移動機構
  3.汚染の防止対策・修復技術・観測例・修復評価
  4.産業系排水の管理と地下水・土壌汚染
  5.地質・土壌に起因する自然汚染
  など多岐に渡っていた。
  油、ダイオキシン類、残留農薬、環境ホルモンの土壌汚染・修復に関する研究発表も複数あり、わが国の抱える土壌汚染問題の多様性を反映していると感じられた。

口頭発表会場

ポスターセッション

<国際セッション>

  開催2日目の14時から18時までとりおこなわれた国際セッションは、オランダ、カナダ、台湾、韓国、中国、タイの各国から発表者を招き、外国の土壌・地下水汚染の現状の報告等が行われた。
<懇親会>
  国際セッション終了後に会場を『ホテル アウィーナ 大阪』へ移し、懇親会が開催された。この懇親会には261名の方が参加した。日頃業務が忙しくメールや電話だけでしか連絡のとれない方々が、大阪の夜を楽しまれていた事がとても印象的であった。

<アンケート結果>

懇親会風景
  会場において実施したアンケート結果の一部をここで紹介すると、参加者が、最も研究集会に期待していたことは、研究発表の実務的有用性と研究発表の動向の把握であった。研究発表の実務的有用性の満足度は低く、研究発表の動向の把握については満足度が高かった。研究集会では、最近の動向や学究の対象がどこに向かおうとしているのかを把握できる反面、実務に近い報告が少なかったということであろうか。
  具体的な指摘としては「ハイブリット形式の賛否両論(複数者回答)」「全部聞きたいが長期の出張は難しい」「セッションをテーマ別にしたり、複数会場でテーマ別に開催し効率化を図る」等があった。
  アンケートでは概ね好評な意見が多かったが、諫言にこそよりよい研究集会の姿が隠されていることを忘れずにアンケートの結果を今後の研究集会に役立てていきたい。
<10回の歩み>
  この研究集会は、平成3年4月京都市で開催された第1回に続き、ほぼ毎年1回のペースで執り行われ、今回の第10回の開催に繋がっている。これを機に今までの研究集会を振り返ると開催状況は下表のようになり、回を重ねる毎に盛況を呈していることがわかる。

<最後に>
  土壌汚染の研究集会は盛り上がっては困る。


研究集会開催状況
その性格上(汚染という負の遺産を取り扱っているので)、国土がきれいになるに従い、どんどん縮小して消滅することが、その使命であり、我々の役目であるとの意を第8回の委員長であった寺島泰教授が、当時の講演要旨集に書かれている。日本の土壌環境は未だその段階には達してはおらず、次回の研究集会も事業活動、研究活動の情報交換の場として利用していただきたい。
  来年の研究集会は、千葉県市川市において6月16日から3日間の開催を予定しています。改めて当ニュース紙面上で開催のご案内をお届けします。では、来年は市川市でお会いしましょう。