「土壌汚染対策法」技術的事項(調査・措置)に関する解説書説明会報告

  土壌汚染対策法に基づき調査・対策、措置を実施していく上で必要となる技術的事項に関し、ようやく「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置の技術的手法の解説」がまとまり、環境省担当者を招いた説明会が東京および大阪の2会場で開催された。(東京:4月8日、日本教育会館、大阪:4月11日、大阪商工会議所)
  説明には、直接この解説書の作成作業に携わった前環境省土壌環境課課長補佐である長坂氏をお招きし、ご説明頂いた。

  この解説書は、「土壌汚染対策法」の概要、調査、措置、Appendixで構成され、各都道府県にも配布されている。 センターでは、本書に関係法令を掲載して一般販売する予定である。
  内容は豊富で、3時間という短い時間で到底すべてを説明することは難しく、また昨年9月に出ている答申とほぼ同じということもあり、解説書の構成と要点のみを説明された。説明のテンポは非常に早く、必死にメモを取る姿が会場の随所で見られた。平成11年に「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針運用基準」が作成され、4年間にわたり運用されてきたわけだが、今回の解説書は土壌汚染対策法を受け、調査・措置ともにプラスαの考え方が追加され、内容がかなり変わっている。資料採取地点のメッシュの切り方や調査地点の位置などもプラスαの要素が加わり、考え方が示されている(表1参照)。

表1.資料採取等の概要
特定有害物質の種類
第一種特定有害物質
(揮発性有機化合物)
第二種特定有害物質
(重金属等)
第三種特定有害物質
(農薬等)
試料採取の考え方 汚染のおそれがある土地
全部対象区画内の1地点
全部対象区画内の1地点
全部対象区画内の1地点
汚染のおそれが少ない土地
30m格子内の1地点
30m格子内の一部対象区
画で複数地点均等混合
30m格子内の一部対象区
画で複数地点均等混合
汚染のおそれがない土地
調査の必要なし
調査の必要なし
調査の必要なし
調 査 方 法
土壌ガス調査

深層部土壌溶出量調査
表層部土壌溶出量調査
表層部土壌含有量調査
表層部土壌溶出量調査

  また、措置については、直接摂取によるリスクの観点では、原則は「盛土」、支障がある場合は「土壌の入れ替え」または「土壌の除去」、地下水摂取によるリスクの観点からは原則は「封じ込め」、支障がある場合は「土壌の除去」となり、措置方法の選択や決定の際の考え方が示されている(表2、表3参照)。
  浄化の概念は入っているものの、位置付けは「土壌の除去」に含まれる形で捕らえられており、前回の「指針・運用基準」とは違い、浄化に関する各種方法についての例示はなく、大分類的な方法についての概説しか掲載されていない。浄化措置は高レベル措置(高額の費用がかかる措置)とみなされ、適用数は少ないと判断されているようである。
 今後センターでは、解説書の説明会を会員及び一般向けに1日〜2日かけて実施する予定である。

表2.直接摂取によるリスクに係わる措置の選択又は決定の考え方
 
通常の土地
盛土では支障がある土地
立入禁止
舗   装
盛   土
土壌入換え
土壌汚染の除去
【凡例】
◎:
○:


●:
原則として命ずる措置
土地の所有者等と汚染原因者の双方が希望した場合に命ずることができる措置
土地の所有者等が希望した場合に命ずることができる措置
(注)1.


2.
「盛土では支障がある土地」とは、住宅やマンション(1階部分が店鋪等の住宅以外の用途であるものを除く。)で、盛土して50cmかさ上げされると日常生活に著しい支障が生ずる土地
特別な場合(乳幼児の砂遊びに日常的に利用されている砂場や、遊園地等で土地の形質変更が頻繁に行われ盛土等の効果の確保に支障がある土地)については、土壌汚染の除去を命ずることとなる。

表3.地下水等の摂取によるリスクに係る措置の選択又は決定の考え方
 
第一種特定有害物質
(揮発性有機化合物等)
第二種特定有害物質
(重金属等)
第三種特定有害物質
(農薬等)
第二溶出量基準(※)
第二溶出量基準(※)
第二溶出量基準(※)
適合
不適合
適合
不適合
適合
不適合
原位置不溶化・不溶化埋め戻し
×
×
×
×
×
原位置封じ込め
×
◎(※※)
×
遮水工封じ込め
×
○(※※)
×
遮断工封じ込め
×
×
土壌汚染の除去
【凡例】
◎:
○:
●:
×:

(※)

(※※)
原則として命ずる措置
土地の所有者等と汚染原因者の双方が希望した場合に命ずることができる措置
土地の所有者等が希望した場合に命ずることができる措置
技術的に適用不可能な措置

「第二溶出量基準」とは、土壌溶出量基準の10〜30倍に相当するものである。
(規則第24条及び同規則別表第4)
汚染土壌を不溶化し、第二溶出量基準に適合させた上で行うことが必要。
 

*表1,2,3: 配布資料より抜粋