最 新 自 治 体 条 例 紹 介


  中央環境審議会の答申を受け、環境省は土壌汚染対策法案を平成14年通常国会に上程した。環境省では同法案の可決を待って、政令・省令を整え平成15年早々にも法律を全面施行させたいとしている。このような中央での動きを睨んで各自治体でも土壌・地下水環境の保全のための法整備に向けた動きが進められている。東京都と埼玉県では全国での動きに先駆け、旧条例の大幅改正と土壌汚染条項の追加を行い、それぞれ「東京都環境確保条例」、「埼玉県生活環境保全条例」として公布・施行した。本稿では各自治体での法整備の最新動向として東京都と埼玉県の条例・施行規則の改正内容について紹介する。

(1) 条例の特徴
   東京都と埼玉県の新条例の内容はほとんど同一であり、その特徴は次の様に要約できる。
   1) 有害物質取扱事業者、土地改変者および有害物質取扱事業者からの土地譲受人の責務(表1
     参照)を明確にしたこと。
   2) 知事から有害物質取扱事業者への汚染処理・汚染拡散防止措置命令を明確にしたこと。
   3) 命令違反者への罰則規定を明確にしたこと。
   4) 汚染地で実施された調査・処理の記録の保管とその継承を義務付けたこと。
   5) 土壌・地下水汚染の処理基準を環境基準に準拠したこと。

(2)施行規則の主な内容
  施行規則では条例で定める汚染処理計画、汚染拡散防止計画、汚染状況調査、汚染履歴調査の内容
  や報告様式等について規定している。
   1) 汚染処理計画に記載する内容
     ・土壌の汚染状況
     ・汚染処理の区域
     ・汚染処理の方法
     ・汚染処理の開始及び終了の時期
     ・汚染処理の期間中の環境保全策
   2) 汚染拡散防止計画に記載する内容
     ・土壌の汚染状況
     ・汚染拡散防止の区域
     ・汚染拡散防止の方法
     ・汚染拡散防止の開始及び終了の時期
     ・汚染拡散防止の期間中の環境保全策
   3) 汚染状況調査の内容
     ・有害物質の使用及び排出の状況
     ・有害物質による土壌等の汚染状況
     ・地下水等の状況
     ・今後の土地の利用計画
   4) 汚染履歴調査の内容
     ・有害物質の取扱事業場の設置状況、その他の土地の利用履歴
     ・有害物質の使用、排出等の状況

(3)今後の課題
  条例・施行規則・対策指針は整備されたが、下記のような課題を積み残しており、土壌汚染対策法など
  大きな枠組みの中での検討が必要である。
   1) 対策費用の負担原則と財源
   2) 土壌・地下水汚染情報の公開
   3) 中小企業への補助金など経済支援等

 表1 事業者の責務※
事 業 者
機 会(契機)
責 務
有害物質取扱事業者(埼玉県条例では特定有害廃棄物取扱事業者) 人の健康に被害を生じた(恐れのある)場合 汚染処理計画を作成し汚染処理を実施
地下水の汚染が認められる地域に存在する場合
事業場を廃止又は建物を除却する場合 汚染拡散防止計画を作成し汚染防止措置を実施
土地改変者(土地の切り盛り、掘削などを行う者) 3,000m2以上の敷地面積の土地を改変する場合
有害物質取扱事業者からの土地譲受人  
  ※小松秀明他(2001,土壌環境センター「技術ニュースNo.2」)を改変


 表2 東京都および埼玉県での環境保全条例
東 京 都  
環境確保条例
施行規則
土壌汚染対策指針
公  布
平成12年12月22日
平成13年3月9日
施  行
平成13年4月1日
平成13年4月1日
土壌・地下水汚染
防止条項については
平成13年10月1日
土壌・地下水汚染
防止条項については
平成13年10月1日
告  示
平成13年9月28日
有害物質
24項目(環境基準物質からフッ素、ホウ素を除く)
汚染土壌処理基準
土壌環境基準
(溶出値)に同じ

埼 玉 県
 
生活環境保全条例
施行規則
土壌及び地下水
汚染対策指針
公  布
平成13年7月17日
平成13年12月4日
施  行
平成14年4月1日
平成14年4月1日
告  示
平成14年4月1日
特定有害物質
26項目(環境基準物質に同じ)
土壌汚染基準
土壌環境基準(溶出値)に同じ
地下水浄化基準
地下水環境基準に同じ