講習会・セミナー報告

開催状況
   平成13年10月〜12月にかけて、下記の講習会とセミナーが開催されました。
開 催 日
内    容
開催場所
10月 4日
特別講習会「東京都新条例の土壌汚染に係る指針について」 主婦会館プラザエフ
10月 5日
法制度化説明会「土壌環境保全対策の制度の在り方について」 主婦会館プラザエフ
11月 7日
技術セミナー「土壌汚染と対応の実務」 食糧会館
12月13日
技術セミナー「地下水・土壌汚染と地下水の予測技術入門」 キャンパスプラザ京都
12月14日
冬季セミナー「土壌汚染と対応の実務」 キャンパスプラザ京都

特別講習会
 10月4日に、土壌環境センター主催の特別講習会が主婦会館プラザエフにおいて開催された。
  まず、土壌環境センター佐藤雄也専務理事より「豊島産業廃棄物事件の公害調停成立」と題する講演があった。6年半に亘る公害訴訟の調停に関し、常に住民とのリスクコミュニケーションに重点をおいて問題解決に努めたことや、住民との信頼関係が極めて重要であったとの体験に基づいた貴重な内容であった。
  引き続き、東京都環境局蓬田健児氏から「東京都新条例の土壌汚染に係る指針について」と題して、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」が平成13年10月1日より施行されるとのことで、極めてタイムリーな講習会であった。
  出席者は160名を超え、会場満席の盛況のもと、熱気のこもった講演と活発な質疑応答が行われた。

法制度化説明会
 10月5日に、土壌環境センター主催の法制度化説明会が主婦会館プラザエフにおいて開催された。
  はじめに、環境省環境管理局土壌環境課の伊藤課長と荒木課長補佐から「土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)」の説明があった。出席者からは実務経験による具体的な質問が活発に飛び交い、関心の高さを窺わせ、さらに法制度化の進展が期待される説明会であった。


発 表 者 名
表  題
要      約
伊藤 洋
環境省水環境部
土壌環境課長
我が国における土壌環
境に関する課題について
 市街地土壌汚染問題への対策の取組みと土壌環境保全対策の制度の在り方についての検討を推進することである。
Harry Vermeulen
オランダ土質管理センター
常務取締役
オランダおよび欧州に
おける土壌品質管理の発展
 土壌品質管理の需給サイドを代表する官民からなる財団がある。費用対効果や汚染技術知識の啓発・伝達、土壌の用途や機能に適した土壌品質を改良し維持するものである。
Edward S, Alperin
米国ITコーポレーション
副社長
米国におけるダイオキ
シン汚染土壌の環境修復
 ダイオキシン汚染土壌の処理方法や処理技術は単一ではない。各サイト情報に見合う処理方法(焼却、抽出、光分解、安定化/単離、物理化学的工程等)の組合せ技術を開発して注意深く実施している。
Manfred Ried
ドイツ ミュンヘン
ビジネスユニット
マネジャー
ドイツにおける汚染土
壌処理−ダイオキシン
とその他の汚染物質の役割
 汚染土壌の処理はオフサイト処理とオンサイト処理で行っている。前者は汚染土壌を掘削により取除いて、サイトから離して遠隔処理(物理化学的工程・焼却・安全な場所への保管)する。後者は汚染土壌の表層土を取除いて裏張り(ジオテキスタイルとポリエチレン膜)を施した上で新鮮な土壌で埋め立て汚染物質の移動を防止する。
橋爪 伸夫
セイコーエプソン(株)
取締役
セイコーエプソンにおけ
る土壌・地下水汚染浄
化への取組と原位置
酸化分解法による揮発性有機化合物の浄化事例
 10事業所で、土壌ガス吸引、吸引ガス活性炭吸着処理、地下水揚水曝気・揮散処理、汚染土壌掘削処理、バリア井戸の設置や揚水による拡散防止対策を実施した。さらに、米国などで短期浄化手法として注目されている原位置酸化分解法(過マンガン酸カリウム等の酸化剤を使用)を導入して短期間でトリクロロエチレンで汚染された地下水を環境基準値以下まで浄化することができた。
柴田 伸幸
名古屋市環境局
公害対策課長
名古屋市における化学
分解法による揮発性有
機化合物の浄化事例
 化学分解法(金属鉄粉と骨材を調合した反応材を汚染帯水層に杭状に充填し、水平方向の地下水の流れや物質拡散によって杭の周囲の汚染地下水を浄化する手法)を用いて浄化実証試験を行い、高濃度のトリクロロエチレンで汚染された地下水の浄化が可能であることが実証できた。この手法は揚水曝気法に比べて浄化設備のスペースや維持管理が不必要な利点がある。
パネルディスカッション
司会:今村 聡
(土壌環境センター)
パネリストは上記メンバーによる
土壌環境の規制の方
向と対策の課題
 会場からの質問を受ける形で行なわれ、浄化が進められる際の住民側、規制側、汚染原因者の意思決定にいたるプロセス、浄化対策の適正なコストと浄化目標、ダイオキシン対策の我が国の現状等多岐にわたった。 討議のなかで、オランダ、米国、ドイツにおけるものの考え方、コスト意識、日本の現状に対する雑感が垣間見え興味深かった。
<セミナー>
土壌汚染と対応の実務(東京・京都)

▲土壌環境センター 佐藤専務理事
 11月7日と12月14日の2回にわたり、セミナー「土壌汚染と対応の実務」が東京と京都において開催された。本セミナーは、センターから9月に発刊された「土壌汚染と対応の実務」をテキストとして、センターメンバー講師により実戦的な講義が行われた。
  参加者は東京で130名、京都で110名と多数に上り、京都では前日に行われた地下水技術セミナーとの連続参加者も多数見受けられた。
  最近の話題としての環境省による法制化の動きや、ISO14000との係わりあいなどに触れた内容もあって、いずれの会場でも熱心な聴講と活発な質疑応答が行われて盛況裡に終了した。

地下水・土壌汚染と地下水の予測技術入門

 12月13日、キャンパスプラザ京都において本技術セミナーが開催された。和歌山大学システム工学部助教授江種伸之氏による「地下水解析の現況と展望」と題しての総括講演に引き続き、深田園子(日さく)、進士喜英(鴻池組)、武暁峰(国際航業)、下村雅則(大成建設)の各氏による地下水汚染に関する水文地質・地下水水理・解析シミュレーション等の基礎的考え方から応用までの講義が行われた。学術的なテーマと内容にも拘わらず、約90名の参加者を得た。講義の後、熱心な質問が多数寄せられ、関心の高さが窺われた。

▲ 和歌山大学 江種助教授