研究所紹介

国立環境研究所
循環型社会形成推進・廃棄物研究センター

国立環境研究所 酒井 伸一

循環型社会形成推進・廃棄物研究センターの設立

 2001年1月に国立環境研究所に「廃棄物研究部」が新設されました。それまでの国立公衆衛生院廃棄物工学部の研究態勢を引き継ぎつつ、廃棄物・リサイクル研究をさらに充実させることとされたわけです。そして、2001年4月からは「独立行政法人国立環境研究所」の「循環型社会形成推進・廃棄物研究センター」として、研究を進めることとなりました。
  循環型社会形成推進・廃棄物研究センターでは、循環型社会における適正な物質循環や廃棄物管理のあり方を研究・提案することとしています。そのめざすところは20世紀型の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から、さまざまな研究と政策のツールを駆使して、物質循環を基本とした環境低負荷型で一次資源利用抑制型の循環型社会を構築することです。研究と政策のツールとしては、技術、情報、モニタリング手法、法制度、経済的手段などがあり、問題の対象に応じて、効果的に組み合わせる必要がでてくるでしょう。

当面の研究概要
 循環研究センターでは、循環型社会への転換を支援するための評価手法や基盤システム整備に関する研究を一つの核に据えています。また、廃棄物の発生から再資源化・処理及び処分に至るまでの様々な局面での廃棄物問題について、廃棄物の発生抑制や資源化、有害物質の管理やリスク管理を念頭においた現象解明的研究から対策技術やシステムの開発や評価などの実用研究までをカバーする研究を進めていきます。当面は5年間の中期計画に定められた4つの研究テーマについて、研究推進することとしています。
  4つの研究テーマとは、
 1)循環型社会の評価手法と基盤整備に関する研究
 2)廃棄物の資源化・処理・処分技術の研究
 3)循環廃棄に関連する総合的なリスク制御手法に関する研究
 4)汚染環境の浄化技術に関する研究です。
 この4研究課題の達成目標の概要は、以下のとおりです。

  1)の循環型社会の評価手法と基盤整備の研究は、廃棄物・リサイクル政策の高度化に資するため、産業連関分析、マテリアルフロー分析、ライフサイクルアセスメント(LCA)などを用いて、環境低負荷型・循環型社会への転換のための施策を評価・支援する手法や循環システムの地域適合性を診断する手法を開発することが目標です。
  2)廃棄物の資源化・処理・処分技術の研究は、廃棄物の循環資源化技術や適正処理処分技術の循環型社会への適合性を高めるため、廃棄物の資源化、処理高度化にむけた新技術の評価手法、埋立地寿命延長や最終処分場の安定化促進・修復に必要な診断・対策技術を開発します。
  3)総合的なリスク制御手法に関する研究では、循環資源や廃棄物に含有される有害化学物質によるリスクを総合的に管理するため、バイオアッセイ法による包括的測定監視手法や、化合物特性に応じて系統的に分離前処理する液体ガスクロマトグラフィ/質量分析システムを用いた監視測定技術を高度化することを目標としています。
  4)汚染環境の浄化技術に関する研究では、現在は有機性廃棄物を対象として、浄化槽等や土壌・湿地等の生態系の活用、および物理化学処理との適正な組み合わせにより、地域におけるエネルギー消費の低減および物質循環の効率化を図るための高度化技術と評価手法を開発しています。

研究体制と展望

 こうした研究を支える組織として、7研究室態勢が用意されています。7研究室とは、
(1)循環型社会形成システム研究室
(2)循環技術システム研究開発室
(3)適正処理技術研究開発室
(4)最終処分技術研究開発室
(5)循環資源・廃棄物試験評価研究室
(6)有害廃棄物管理研究室
(7)バイオエコエンジニアリング研究室です。
現在は、研究員約25名、ポスドクフェロー約10名と研究調整官の態勢で、研究基盤を創りつつ研究を進めているところです。循環研究センターの研究棟は建設中(完成イメージは写真のとおり)であり、また研究組織も拡充しているところですので、当面は研究態勢の足腰を固めることに専念せざるを得ませんが、循環型社会創りに関係するさまざまなアクターとの協調のための議論を進めていきたいと思っています。
  土壌環境との関係では、3)総合的なリスク制御手法に関する研究や、4)汚染環境の浄化技術に関する研究が強く関係していくことになるでしょう。埋立地や投棄跡地など廃棄物との関係が強いフィールドも多くあることが予想されます。また、1)の循環型社会の評価手法と基盤整備の研究を進めている環境システム工学的、環境経済学的な研究が関連してくる場面もあるかもしれません。
  以上が具体的な研究課題と研究態勢です。「持続可能な発展(Sustainable Development)」の概念が提案されてからすでに10年以上たちますが、見方によれば、この持続可能性と開発とはより深刻性をもって対立しつつあるとの認識をした方がいいのかもしれません。土壌環境保全のための枠組みについても、まだまだ検討すべき課題があると耳にしています。ともに考えさせて頂ければ幸いです。



▲ 国立環境研究所 研究本館T 玄関




▲ 廃棄物・リサイクリング総合研究棟(完成イメージ)