海外視察団報告

 
視察団団長 美坂 康有 
6月3日
成田発, San Diego着
6月4日〜7日
In Situ and On-Site Bioremediation
6月8日
General Atomic社訪問
(環境遠隔モニタリング)
Bowerman廃棄物処分場訪問
(一般廃棄物埋立て処分状況)
6月11日
Shevron社精油所跡地浄化現場訪問
(掘削、土壌ガス吸引)
Norwalk燃料補給基地跡地訪問
(水平井戸土壌ガス吸引、触媒燃焼)
6月12日
Los Angels発
6月13日
成田着
  今回の海外調査は、第6回In Situ and On-Site Bioremediation Symposiumに参加聴講することを主目的に、米国における汚染浄化サイト数カ所の訪問を加えて実施された。本調査には、土壌環境センター会員企業から22名が参加した。
 このシンポジウムは、隔年でSan Diegoで開催されており、Battelleおよび協賛企業が主催して、産官学が参加するシンポジウムであって、いわゆる学会ではない。5つの会場で同時進行の口頭発表313件(セッション数54)が行われ、さらに2回に分けてポスター発表152件が提供された。また企業やEPA等の公的機関の展示ブースも開示された。その他トレーニングコースも開催され、多種多様な構成となっていた。これらがすべてSheraton Hotel内で行われた。今回の参加者
(正式登録者)は最終日正午現在で1,297名とのことであった。
 バイオレメディエーション(以下、バイオ)の会議であったため、全体的に汚染浄化や汚染評価をバイオの観点で対処する基本的立場が底流としてあり、バイオの専門家にとっての「先端的研究成果は?」という興味と、一方現実の汚染サイトでどの程度の特性把握に対して「バイオの実用的適用性やその技術的・経済的進歩は如何に?」と言う実際面からの関心が混交していたように感じた。
 米国ではこの数年MNAの適用評価による、より安価なサイト浄化の模索とガソリン添加剤MTBE対策が大きな話題・課題になっている。後者は石油業界、規制当局、対策技術開発者等の関係者にとって関心の深いところである。今回の発表にもこの両者の関連が多く見られた。
 小生の知己およびそれらの人たちを通じて紹介された他の人々との会話を通じて、少なくともバイオの実用推進の立場からは、このシンポジウムはサイトの具体的問題解決や新技術適用(パイロット、デモンストレーション等)に関するよりは研究主体の方向へシフトしているとの指摘があったのが極めて印象的であった。一方環境バイオのシンポジウムとしては研究的関心を惹く存在として盛況を呈している。前回までに比較して、発表国がますます多彩となり欧州各国(ロシア等旧東側も)、南米諸国、日本・東南アジア等の地域からの件数が増加している。
 基調講演ではアカデミー賞主演女優賞受賞作品のエリン・ブロコビッチ本人、US Navyから科学に立脚した技術を(US Navyに限らず軍は汚染浄化技術評価に多額の出費をしている)、EPAから微量化学物質の毒性、コーネル大学から最先端の汚染物質分解微生物の研究状況についてそれぞれ論じられた。当然のことかも知れないが「言いたいことはすべてはっきり言う」というアメリカ流の国民性が改めて痛感させられた。
 汚染サイト訪問では、当初の軍の施設(跡地)での浄化状況、施設訪問の確定的予定が直前になってキャンセルされる等混乱があったが、最終的には冒頭にあるように数カ所の訪問ができた。
 予定していた軍の施設は広大な海兵隊の敷地内(Pendleton)にあり、民間転用予定地である。万事オープンな米国でも、最終的に日本からの団体は受け入れ難いとのことで拒絶されたという。
 Shevronの跡地でも敷地内部には入れず、金網塀の外部から説明を受けた。このサイトは、道路を隔てた直近の位置に、浄化を開始してから売り出された建売り住宅が並んでいる。「市当局、住民、土地所有者(Shevron社)、浄化事業者(IT Corporation)等の関係者間で問題はないのか?」の質問に対して、市の説明で住民が納得するか、住民からの電話での問い合わせに対するShevron社、IT社の対応で問題化していないとのことであった。
 NorwalkのDFSP(Defence Fuel Supply Point)跡地の大規模な4本の水平井戸による土壌ガス吸引(SVE)は参考になった。ジェット燃料などの石油系燃料タンクが並ぶサイトで高濃度ガスを燃焼している。今後SVEを止め、使用中の水平井戸を利用してバイオに転換検討中とのことであった。
 視察団に参加された団員の皆さんは、あらかじめ決められた分担に応じて情報収集に熱心に取り組まれた。詳細については報告書を参照されたい。
 IT Corporation社 Paul Parmentier氏、Neil Irish氏、Dan McCullar氏には、サイト訪問の設定と案内説明に多大の労をかけた。感謝申し上げる。