<技術紹介>
土壌・地下水汚染物質(TCE,PCE)の処理技術
−気相中の紫外線分解無害化−

1.はじめに
 トリクロロエチレン(TCE)・テトラクロロエチレン(PCE)などの揮発性有機塩素化合物による土壌・地下水汚染に対して従来は、汚染物質を土壌ガス吸引法や地下水揚水法等で吸引や揚水により地上に取り出し、活性炭吸着法によって処理され、吸着処理後の回収溶剤や活性炭は特定管理産業廃棄物として焼却処理されるのが一般的であったが、紫外線酸化と生物処理を組み合わせてこれらTCE、PCEを分解無害化する技術が開発された。その技術の一端を紹介する。

2.概要
 この技術は汚染ガス中に含まれるTCEなどの揮発性有機塩素化合物を紫外線(UV)により数秒で分解し、水に可溶な生物分解可能な物質に変換して生物処理するもので、化学酸化に生物処理をプラスして無害化処理するものである。
 処理の概要を、右図に示す。  まず、土壌や地下水から取り出されたガス中のTCEなどに、紫外線を照射して酸化分解する(UV処理装置)。次に分解されて生じるジクロロアセチルクロライド等の分解生成物(ガス)を、ガス系から水系に吸収する(吸収装置)。最後に吸収液中の分解生成物を好気性微生物により生物分解し無害化する(生物処理装置)。




3.処理の詳細
(1)UV処理
 揮発性有機塩素化合物は酸素雰囲気中で水銀ランプからの紫外線照射により、数秒で99.99%分解される。紫外線の作用によりラジカル塩素が発生し、それがさらにTCE等を分解する連鎖反応がおき、短時間で塩化カルボニル、ジクロロアセチルクロライドなどが生成する。また、分解に使用する紫外線は185nmの波長が最も効果的なことから、この紫外線を放出するランプを用いることにより数秒という短時間での分解を可能としている。10,000ppmの高濃度でも分解可能となっている。
(2)吸収処理
 UV酸化により生じるガス中のジクロロアセチルクロライド等の分解生成物は水への溶解度も高く、吸収装置により水に吸収させる。吸収させると水と反応しジクロロ酢酸、塩酸等になるため、水酸化ナトリウム等により中和し中性塩の形とする。処理された浄化ガスは大気に放出できる。このように汚染ガスはUV処理、吸収処理により数秒で処理され浄化ガスとして放出され、分解生成物は吸収液中に濃縮できる。この処理により数百m3の汚染ガスが数十リットルの吸収液となるため、後の取り扱いが容易となる。
(3)生物処理
 吸収液中のジクロロ酢酸等の分解生成物はさらに微生物により生物処理され、二酸化炭酸ガス、水、塩化ナトリウムにまで分解され、無害化される。既存の生物処理装置がある場合は、そこでの処理も可能である。

4.まとめ
 この技術は紫外線分解、水吸収、微生物処理の組合せにより、最終的にTCE、PCEを無害化するものである。高濃度対応で高い処理能力、有害廃棄物を発生しないこと、高価な活性炭を使用しないため処理費が安い、といった特徴がある。汚染源対応型の技術であり、汚染現場で分解無害化が出来るため非常に魅力的な技術といえる。

 本号では初めての試みとして会員企業の技術紹介を掲載しました。
 今後も皆様の御要望に応じてこのような試みを行っていきたいと思います。