現場紹介

このたび新企画として、土壌・地下水汚染の調査や浄化に取り組んでいる現場を取り上げレポートすることにしました。ただ各現場では様々なデリケートな問題をかかえ、どこまで情報を開示できるか、また毎回連続して報告できるかどうかわかりませんが、浄化に対する啓蒙活動の一助となれば幸いです。今回は兵庫県におけるサイトレポートをお届けします。
兵庫県では、平成8年度環境庁の実証事業の一環として阪神大震災により被害を受けた県下3ヶ所において、当センターの会員3社(神戸製鋼所、竹中工務店、鴻池組)と土嬢・地下水の浄化装置を開発・設置し、翌平成9年より現在に至るまで浄化作業を継続しています。各現場とも順調に浄化は進んでいるものの、これまでには様々な苦労もあったようです。


A地区
当サイトは地中に漏洩したテトラクロロエチレン等を土壌ガス吸引装置によって浄化している。
(1)設備概要
装置は実証事業の目的から経済性を重視したため、ガス吸引井戸2本(φ50×2、500、φ50×2、700)、気液分離塔1基、活性炭塔1基(充填量75L)、真空ポンプ1台(吸引ガス量1Nm3/min.)という簡単な構成となっている。
(2)現場の声
・当エリアは人家が立て込む市街地であるため静寂さと省スペースに配慮する必要があった。特にスペース上の制約が大きく、幅約50cm、長さ約5mの隣家との隙間に設置することとなり、設備の構成・配置に苦慮した。
・本体同様、スペース上の制約からガス吸引井戸を駐車スペース内に設置するしかなく、ある時、駐車しようとした車の下敷きとなり、地上部分が破損するということもあった。
・当エリアは当初土壌ガスのみを浄化対象としていたが、事前調査時より帯水層が浅く、作業を開始してみると、ガスと同時に地下水を吸引するようになった。そのため気液分離塔がすぐに地下水で溢れ、非常停止装置により装置が停止して、作業が思うように進まなくなった。そこで自動化を図るべく装置の改造に取り組み、分離塔内に溜まった地下水を曝気吸着処理により排水基準値以下に浄化して自動的に放流するようにした。その結果作業時間を大幅に短縮し、また装置も朝夕のメインスイッチのオンオフのみ行えば自動連転が可能となった。


B地区
当サイトでは土嬢中の有機塩素系化合物を、土壌ガス吸 引法及び池ド水爆気処理法を用いて浄化している。
(1)設備概要

当エリアでも簡易性、経済性を目指した装置となっている。

吸引井戸2本(ガス用φ50、ガス・地下水用φ150)
ガス吸引ユニット:
  吸引ブロワ-1台(730NL/min.×1.5kw)
  分離水排水ポンプ1台(15L/min.×0.2kw)
  活性炭塔1基(100L)
揚水曝気処理装置:
  活性炭塔1基(100L)、曝気槽1槽
  曝気ブロワー1台(800NL/min.×1.5kw)
  誘引ブロワー1台(1.5Nm3/min.×0.2kw)

(2)現場の声
・当エリアも人家の密集した市街地にあり、近隣対策として防音・防振対策を考慮しなければならなかった。そのため平日の昼間時間帯のみの間欠運転となり浄化効率の向上に苦労した。ただ装置そのものは全自動運転をしており、順調に稼働している。
・事前調査段階では相当量の地下水爆気処理が予想されたが、現実には揚水量が想定より少なかった。浄化現場における、事前調査の重要性を再認識する結果となった。




C地区
当サイトでも土壌中の有機塩素系化合物を、土壌ガス吸引法及び地下水曝気処理法を用いて浄化している。
(1)設備概要

・吸引井戸
吸引井戸はφ100mmの孔を粘土層(GL-2.0m)まで削孔し、上嬢ガスを吸引するためφ75mmの外管を挿入、地下水揚水のために内管を挿入し、外管周囲を砂利で埋め戻し上部を密閉した。
・処理設備
図に示すように吸引された土壌ガス及び地下水を気液分離塔で分離し、土壌ガスおよび曝気後のガスをガス系処理活性炭で、曝気後の地下水を水処理系活性炭で吸着 除去処理した。吸引ガス風量は60Nm3/hとした。運転は 毎始業点検後手動で開始し9時間の運転後自動停止するように設定した。
また、漏電・真空異常等に対しては自動停止するように設定した。
(2)現場の声
・このサイドでは地下水中のPCE濃度は高いが揚水量が少ないため、PCE回収量を土壌ガス吸引による場合と比較すると、地下水吸引による回収量はかなり少なく、土壌ガス吸引によるPCE回収の方が効率的であった。
・このサイトは周辺交通量も少なく非常に静かな住宅地の中にあり、夜間の保全管理を兼ねて吸引井戸以外の設備は、組立ハウスの中に収納して浄化設備の運転による騒音の低減を図った。