環境省からのお知らせ
「湧水に係る環境省の取組みについて」


渡邊 浩行
 環境省 水・大気環境局 
 土壌環境課 地下水・地盤環境室
 渡邊 浩行
プロフィール
平成18年4月より現職
  環境省では、環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組の一つとして、全国の湧水の把握状況等の調査を行っています。平成18年度には湧水復活・保全の具体的な方策や指標検討のための基礎データ収集として、代表的地域2ヶ所を選定し調査を実施しました。さらに平成19年度からは「湧水復活・保全活動支援の推進調査」に着手します。

1. 「湧水の把握件数」について
  平成17年度に引き続き、平成18年度も全国の湧水の把握状況等の調査を実施しました。平成19年3月末現在、1,534自治体より回答があり、自治体が把握している湧水の件数は計12,331ヶ所となっています。
  今後も引き続き調査を行い、環境省の湧水保全ポータルサイトにて公表していきます(アドレスは以下のとおり)。
http://www.env.go.jp/water/yusui/

2. モデル地域における湧水実態調査について

(1) 野川流域における湧水調査(都市地域)
  多摩川の支流である野川を対象として、流域内の湧水の湧水量、水質、文献調査、既存調査資料の収集等を行いました。結果の概要は、以下のとおりです。
・全体的な傾向として、冬〜初夏にかけては湧出量が少なく、夏〜秋・初冬までは湧出量が比較的多いという季節に伴った変動がみられました。
・野川流域の34箇所の湧水で現地調査を行った結果、いわゆる「国分寺崖線」の斜面部分からしみ出す形態の湧水がほとんどであることが分かりました。なお一部には自噴型の湧出湧水も確認されました。
・現在も生活用水や農業・水産用水として湧水を利用されている例が確認されました。また生態系等保護の観点から住民やNPO団体が積極的に保全活動を行っている事例が多い地域といえます。
・調査該当区市の担当者からは、昨年の夏期の降水量が豊富であったため例年より湧出量が多いという回答が多く寄せられました。
・湧出量については地点により差があり、毎秒0.037〜27.6リットルの範囲にあり、自然に湧出している湧出量として最も多いものとしては毎秒17リットルでした。
(2) 富山県全域における自噴井戸調査
  富山県内の6つの扇状地地域において、自噴井戸の存在位置、湧水量、水質、文献等の調査、既存資料の収集及び湧水・自噴井戸に対するアンケート(対象戸数11,940戸のうち7,006戸より回答)を行いました。
・アンケート調査により、調査地域では自噴井戸2,977本が存在することが確認されました。
・前回(昭和60年代〜平成元年)の調査から自噴井戸の分布範囲の縮小状況は明確に判定できませんでしたが、地区によっては枯渇した自噴井戸があることや、湧出量が減少していることが確認されました。
・住民意識調査の結果、自噴井戸の所有、非所有にかかわらず、多くの住民が自噴井戸に対して常日頃から関心を寄せているという結果が得られました。
   また、自噴井戸を所有している住民の方ほど、地下水の存在を「当たり前のこと」として捉える傾向が高いという結果になりました。このため、今後の保全活用では井戸の所有者であるかどうかを問わず地域住民全体の自噴井戸の保全に対する意識醸成を図っていくことが重要であると考えられます。

3. 今後の湧水保全施策について
  環境省では、湧水復活・保全活動の支援事業として平成19年度から3ヵ年にわたり、湧水復活・保全活動の支援の在り方の検討を行うとともに、「湧水保全ガイドライン」として各種マニュアル(湧水存在状況調査、湧水量・水質調査、湧水地整備、湧水保全活動実施、湧水復活計画作成等)を作成します。
  このため、湧水保全に積極的な地域を毎年数ヶ所モデル地域に選定して、湧水の実態や保全活動の状況などの調査を行い、各種マニュアルに調査結果を反映させていくこととしています。これらの情報は、今後ウェブサイト、パンフレット等を通じて地方公共団体やNPOなどに提供し、湧水復活・保全活動を支援していく予定です。