昨年11月28日に、大阪市西区の大阪科学技術センターにおいて、(社)土壌環境センター主催による「土壌汚染リスクマネジメントセミナー(関西)“企業にとって土壌汚染リスクマネジメントは如何にあるべきか”」が開催されました。 | |
このセミナーは土壌汚染が引き起こすリスクに対しリスクマネジメントの基本的な考え方、適正なリスク対応事例等について紹介することで、土壌汚染に対する企業の適正な取り組み方の指針のひとつになればと企画されたものです。 リスクコミュニケーションは行政、事業者、国民、NGO等のすべての利害関係者が情報を共有しつつ、相互に意思疎通を図ることが大切で |
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あるとの観点から、この分野における産、官、学、民の有識者の方々を講師に招きました。 セミナー参加者は168名に達し、その内訳は会員85名、一般62名、自治体関係者21名でした。 開催にあたり環境省土壌環境課鏑木課長のご挨拶、センターの主旨説明よりセミナーはスタートしました。 講演は和歌山大学の平田健正氏、松下電器産業株式会社の越智徹氏、財団法人ひょうご環境創造協会の小林悦夫氏、環境監視研究所の中地重晴氏、東京海上日動リスクコンサルティング株式会社の志田慎太郎氏の5人の方から頂きました。それぞれの講演の表題と要約は紙面下表に記載していますので御参照ください。 セミナーの最後は大阪産業大学の村岡浩爾氏をコーディネーターにお迎えしパネラーに各講演者を交えて「企業にとって土壌汚染リスクコミュニケーションは如何にあるべきか?そして企業、行政、市民など関係者はリスクコミュニケーションにどのように取組むか」という議題でパネルディスカッションを開きました。会場からも積極的に質問の手が挙がり、タイムリーなテーマへの関心の高さがうかがわれました。 |
講 演 者 |
表
題 と 講 演 内 容 の 要 約 |
平田 健正 和歌山大学 システム工学部 教授 |
<我が国における土壌汚染リスクマネジメントの発展と課題> リスクコミュニケーションは時として土壌汚染の修復のための調査手法や対策技術 の開発等の技術論とは別の次元で議論が展開されることが珍しくない。このような事 態にあって、これまでに経験した事案で遭遇した課題を中心に技術的側面を踏まえな がら土壌地下水汚染修復の現状を紹介した。 |
越智 徹 松下電器産業(株) 環境本部 参事 |
<企業の土壌汚染リスクマネジメント事例 −土壌・地下水の保全−> 松下電器産業では1989年に本社・環境保護推進室発足から自主的に土壌汚染問 題に対応を講じてきた。その中で情報公開を数多く実施してきたが、土壌汚染に取り 組む上でリスクマネジメントは非常に重要な要素であり、当社の事例が問題解決に 少しでも役立てば幸いである。 |
小林 悦夫 (財)ひょうご環境創造協会 副理事長兼専務理事 |
<土壌汚染に於ける行政や事業者とのコミュニケーション> リスクコミュニケーションはガイドラインにしたがって事務的に進めるものではなく、 十分なコミュニケーションを自治体内部、自治体間、自治体と事業者、住民と事業者、 住民との間で行い、説得でなく、納得の行く対応が重要である。一番大切なのは多く の主体間のコミュニケーションであり、担当者一人一人の熱意とやる気ではないだろ うか。 |
中地 重晴 環境監視研究所 所長 |
<土壌汚染対策における市民と事業者とのコミュニケーション> 偏った情報提供や情報開示の遅延によって反発が生じ、土壌汚染対策が進まない ケースが往々にして存在する。 我々がリスクコミュニケーションを図る中で、最も注意しなくてはならないのは、それ ぞれの立場を尊重し、連携することができるのかということであろう。その関係を構築 するためには関係者の中で情報や認識の共有が図れるかが重要である。 |
志田慎太郎 東京海上日動リスクコン サルティング(株) 取締役主幹 |
<企業の土壌汚染リスクと損害保険> 企業の土壌汚染リスクとは不動産価格の下落、対策費用の負担、賠償責任の負 担、企業イメージの悪化等があげられる。様々なパターンの土壌汚染の発見から損 害の発生までの一連の流れの中では、保険の適応になじまない要素が数多くあり損 害保険の限界が見えてくる。このような状況の中で土壌浄化費用保険の現状と、今 後想定される保険の活用法を考察した。 |