自然的原因による土壌汚染に関するセミナー報告

  4月13日(水)13:00より、四谷区民ホールで「自然的原因による土壌汚染に関するセミナー」が開催されました。土壌汚染対策法が施行されて2年が経過した現在、自然的原因による土壌汚染と判断される汚染事例も報告される中で、現場では人為的な汚染との区別等において一部に混乱も見られています。本セミナーは“自然的原因って何? どうすればいいの?”という副題が示すように、土壌汚染の難題である「自然的原因」の実態にせまり、適正な取り組みへの一助にしていただくことを意図したものです。
  セミナーでは自然的原因による汚染の基本的な考え方と判定方法について、当センターの2名の委員が説明し、次いで汚染のメカニズムと識別方法等について研究者の立場から、また行政の立場から東京都の対応事例について報告をいただきました。
  参加者は会員外の一般参加者107名、行政担当者49名を含めて約400名に達しました。自然的原因による土壌汚染の判定という課題に高い関心が寄せられていることが、参加者の多さとなって現れたものと思われます。当センターではこのような好評に応えて、平成17年7月15日(金)キャンパスプラザ京都で同様のセミナーを開催することになりました。
  なお、セミナーの冒頭で行われた趣旨説明において、従来“自然由来あるいは自然起源の土壌汚染”のような用語も使用されていたものを、当センターでは“自然的原因による土壌汚染”と統一して用いるよう取り決めたことが報告されました。
自然的原因による土壌汚染に関するセミナー

講 演 者
表 題 と 講 演 内 容 の 要 約
白鳥 寿一
(社)土壌環境センター

<自然的原因による汚染の考え方>
 自然的原因による土壌汚染の法における扱いや定義・特徴から入り、明確な事
例、利用できる資料、公表されている対処方法等について説明された。また都市
部における土壌汚染の原因評価の難しさ、区分の方法等について解説があった。
まとめとして、検出された土壌汚染に対して安易に“自然的原因”を口にするべき
ではなく、資料・データを収集し行政と協調しながらしっかりとした検証のもとに判
定することが必要であることを強調された。
前川 統一郎
(社)土壌環境センター
<自然的原因による汚染の判定方法>
 初めに土壌汚染対策法等による“土壌汚染の定義”に照らして、自然的原因に
よる土壌汚染が生じた土砂を移動させる行為が“汚染原因行為”となる場合とそ
うでない場合について解説され、次いで土壌法等で示されている自然的原因に
よる土壌汚染の判定基準について、特定有害物質の含有量の範囲・分布特性の
点から説明がされた。最後に自然的原因による土壌汚染の判定事例が紹介され、
まとめに判定における留意事項4項目が示された。
丸茂 克美
独立行政法人
産業技術総合研究所
<自然的原因による汚染の値と汚染のメカニズム>
 導入のエピソードとして、本来土壌汚染がないはずの“神社・仏閣”にも土壌汚
染が検出されている事例が紹介され、日本列島の地質学的特徴として砒素が多
いこと、有効な資料となる地球化学図について各国の状況を交えながら最新の
「日本の地球化学図」について解説された。また、分析・評価の重要な要素である
化合物の形態分析について研究成果の中から事例が紹介されたほか、自然的
原因による汚染の識別法として堆積環境の重要性・鉄と重金属の相関性・検液の
pHと溶出量の相関性等、豊富な研究事例が紹介された。
島田 光正
東京都環境局環境改善部
副参事
<自然的原因による汚染の行政の対応事例(東京都)>
 自然的原因による土壌汚染について、“行政としてどの様に判断し処理したか”と
いう観点から貴重な事例報告があった。基本的な考え方・判断の観点・判断に利用
する資料等についての解説に続いて、11件の事例について対象敷地の規模・土地
履歴・汚染状況・自然的原因と判断した物質・判断内容・拡散防止対策について紹
介された。土地所有者(開発者)の強い意向で汚染が自然的原因によるものという
判定にこだわる場面もあるが、対策手法の選定においては自然的原因か否かは
結果的にほとんど影響しないことが説明された。