「韓国の油汚染対策事情」セミナー報告

  去る2月15日(火)10:00より、JAホール(東京都千代田区大手町)にて、土壌環境センター主催の「韓国の油汚染対策事情」セミナーが開催されました。
  現在日本では、油類が土壌汚染対策法の対象物質になっていませんが、実際にはガソリンスタンドを始めとして多数の油汚染地が存在し、自主的に調査・対策が講じられているのは、会員各社の皆様もよくご存じのことと思います。こうした現実をふまえ、油汚染に関する土壌環境基準制定にむけ関係諸機関で検討が進められていますが、現時点では
「韓国の油汚染対策事情」セミナー報告
まだ明確な調査・対策の指針はなく、油汚染地の円滑な土地取引の阻害要因となっているのが現状です。
  今回のセミナーは、油汚染対策について先進国である韓国の事例に学ぼうとの趣旨で、同国内において油汚染問題に取り組んでいる行政、研究機関、企業の三者を招いて開催されました。
  米国や欧州の土壌環境問題については、既に数多くの情報が日本国内でも入手できるようになっています。一方韓国については、油汚染に関する規制があるのは知っていても、その実態については隣国でありながら良くは分からないと言うのが現状なのでは無いでしょうか。今回のセミナーでは当センター佐藤専務理事の挨拶に続いて、各講師により「土壌環境保全法の概要」「油汚染の分析法」「製油企業の対応状況」について貴重な講演が行われました。
  韓国では土壌環境保全法が95年に制定されています。日本に先立つことは勿論、世界的にもオランダに続く2番目の制定ということで、油による土壌汚染に関しても数々の先進的な取り組みがなされています。

  例えばリスク評価に基づいて対策目標を設定する、民間企業による自発的な取り組みが可能なように体系化されている、などの点は、今後の日本での対応にも参考になるだろうと思われます。
  約180名の出席者は、時折メモをとりながら各講師の説明に熱心に耳を傾け、終了後には鋭い質問も出るなど、韓国の土壌環境や油汚染問題に対する関心の高さが伝わってきました。
  また、講演は韓国語で行われましたが日本語の同時通訳付きであり、配付資料も韓、日、英の3カ国語で用意され、とても有意義なセミナーとなりました。

講 演 者
表 題 と 講 演 内 容 の 要 約
イムチョンヒョン
林 鍾 賢

環境省漢江流域環境廳

流域管理局長
(前)環境省土壌水質
管理課長
<韓国における土壌環境保全法の概要>
 「土壌環境保全法」は95年に施行され、その後の改訂を経て01年にはほぼ現在の
内容になった。対象汚染物質は油類を含む16項目で、対策基準と憂慮基準の2段階
の環境基準が定められている。大手企業が自主的に対策実施できるように体系化さ
れている。自治体が対策を実施する場合はリスク評価による優先順位に基づいて範
囲や期間を決定し、指定区域の指定に当たっては住民の利害関係を尊重して決定
する。
キムテソン
金 泰 承
環境省國立環境研究院
廢棄物研究部 
土壌環境課
<油汚染の分析法>
 「土壌環境保全法」施行に伴い96年に「土壌汚染公定試験方法」が告示された。大
きく漏出検査法と土壌汚染分析法に分けられる。分析法は機器分析だけでなく試料
採取方法なども規定され、油類としてTCE/PCE、BTEX、TPHについて分析法が規定
されている。
チョチョンレ
趙 重 來

SK株式會社
常務, 安全環境經營
<製油企業の対応状況>
 SK社は韓国に5社ある主要な精油会社のトップであり世界的にも十指に入る。土壌
汚染について社内管理規定を定めるとともに、国と油汚染対策に対し自主的に取り組
むための協定を結んでいる。協定運用上の問題として、国と地方自治体間の一貫性
のなさや、協定自体を大企業優遇と見なしかつ情報公開を求める動きがあることなど
を指摘している。