〜 環 境 省 雑 感 〜

志々目 友博




環境省水環境部
地下水地盤環境室長
志々目 友博
志々目 友博 プロフィール
1961年 鹿児島県生まれ
1984年 京都大学工学部衛生工学科卒業
1984年 環境庁入庁
     環境庁(水質保全局、大気保全局、企画調整
     局)、 厚生労働省、北海道庁において、水質
     保全、大気保全、環境影響評価、水道、廃棄
     物行政等を担当
2003年 環境省環境管理局自動車環境対策課長補佐
     廃棄物リサイクル対策部企画課自動車リサイ
     クル対策室長
2004年4月 現職に就任

  昨年4月から地下水・地盤環境行政を担当いたしております志々目でございます。(社)土壌環境センタ−の会員の皆様方には常日頃大変お世話になっております。この場をお借りしまして御礼申し上げたいと存じます。

  さて、私事で恐縮ですが、四半世紀前、大学の教養課程で有機化学を担当されている教授が「人生裏山に花道あり」と授業中に板書され、「環境問題に取り組む皆さんはがんばってください」と激励されたことがありました。残念ながら当時の講義内容は記憶に残っていないのですが、環境分野が裏山であるということが極めて印象的だったことを覚えております。
  その後、土壌・地下水汚染問題、廃棄物問題、地球環境問題等が国内外の重要課題になり、土壌汚染は環境問題としてのみならず土地評価等の経済にも直結した問題となりつつあります。このような分野で永年ご尽力されてきました会員の皆様方の御経験、知識・技術が益々求められる時代になってきているのではないかと痛感しております。

  環境対策を進めるためには、(1)これを推進するための社会的なニーズ、(2)経済的かつ効果的な浄化技術等の開発・普及、(3)関連制度の充実が不可欠です。この中で技術開発は要になります。土壌・地下水浄化分野では、国内外で大きな動きが見られます。
  バイオレメディエーションひとつをとっても有望な技術が生まれつつあり、環境省と経済産業省は統合した指針をまもなく告示する予定です。この指針の運用によりバイオレメディエーションの健全な発展に役立てたいと考えております。海外でもこの分野の研究が盛んになっています。例えば米国の研究者が有機塩素系の汚染物質を浄化する細菌のゲノム解析に成功したことが本年1月のオンライン版サイエンス誌に掲載されました。また、汚れた水や土壌の浄化のために汚染物質を吸収するナノ粒子を使う研究等も進んでいます。
  環境省ではセンターに検討会を設置していただき、土壌・地下水浄化技術等の開発・普及を図ってきました。現在は硝酸性窒素により汚染した地下水の浄化実証試験等をお願いしています。今後、我が国オリジナルの浄化技術の充実と浄化対策が推進されますよう、皆様方のご協力を賜ることができればと存じております。

  また、私の仕事の関連では、地盤沈下の沈静化等に伴い、新たな地下水の利用ニーズが高まりつつあり、今後、地下水の利用と保全の両面から政策を充実していくことが求められております。現在、検討に着手したばかりですが、良好な地下水質の確保を前提として進めていきたいと考えております。

  昨年出席する機会がありました国連持続可能な開発委員会の関連行事において世界銀行等の関係者が「日本は水分野のチャンピオン」と紹介していました。環境対策については最先端の国であることに誇りを持って、官民が協力し、負の遺産の解決に向けて前進していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申しあげます。