部会長 今村 聰 |
TC190部会は、ISO/TC190(Soil Quality : 土壌環境)で審議される土壌環境に関するさまざまな規格・ガイドラインの情報を収集するとともに、規格に対するコメント・投票活動を通じて、わが国の土壌環境関連の規格整備や保護を目的として、2001年に発足いたしました。TC190部会は、(社)土壌環境センターの活動にとっても、重要な規格類とISOで定められる規格類との整合性をはかるために、活動を続けてきています。ISO/TC190は、ISO
(国際標準化機構,International Organization for Standardization)に設置されている現在226あるTC(技術委員会,Technical
Committee)のひとつです。ISOへの加盟団体は、当該国での標準化に関して最も代表的な国家機関と定められており、各国1団体の加盟とされていることから、我が国では経済産業省に設置されている日本工業標準調査会(JISC)が加盟団体となっています。しかし、JISCには規格案を審議できる専門家がいないため、各TCに密接に関連する国内の学協会に実質的な審議および対応を委託しており、担当団体は国内審議団体として経済産業省に登録されています。したがって、国内審議団体における決定事項は、直接、日本の意見となります。TC190
に対する国内審議団体は現在(社)地盤工学会が審議団体となっており、当センターTC190部会は(社)地盤工学会TC190国内専門委員会(委員長:和歌山大学平田健正教授)の 下部組織として、環境省と関係の深い規格について審議を行っています。 5年間にわたる活動のトピックとして、環境庁告示46号(土壌の汚染にかかる環境基準について)とISO/CD ISO/DIS 21268-2(土ならびに土質材料の化学的・生態毒物学的試験のための溶出方法 −その2:液固比10 L/kgによるバッチ試験)の溶出試験法の統一は大きな成果だと考えています。液固比、振とう機の種類・振とう時間・方法・強度、ふるいのサイズ、ろ過方法について大きく異なったISO基準と告示の整合性をはかるために、2回の国際比較試験を通じて、わが国の告示も標準的な方法として取り入れられるようにしました。環境省告示19号(環境省土壌含有量調査にかかる測定方法)についても同様の状況があります。告示19号は土壌の直接摂取に伴うヒトの吸収量を、簡便な酸抽出により評価する試験方法ですが、ISOでBioavailabilityもしくはBioaccessibilityと呼んでいる概念と同一であり、現在2つのWG(ワーキンググループ)により審議が開始されています。土の摂取に伴うヒトの吸収量を評価する方法は、わが国の方法よりはるかに複雑な方法となる可能性が大きいと思われます。その結果、わが国が採用している簡便な酸抽出法が評価方法として妥当なものではないとされる可能性もあります。そのような事態を避けるために、TC190部会はBioavailabilityに関するガイドラインの執筆やわが国の告示の意味を訴え、整合性をもたせるようにしていく所存です。また、来年10月10日〜14日は東京でISO/TC190総会が開催される予定であり、ホスト国として、ISO規格制定に貢献するとともに、わが国の発言力を増すように努力していきます。 会員諸氏にとっても関連の深い規格類の審議状況や、世界における土壌環境関連のトピックをお伝えすることは有意義と思われますので、今後さまざまな場を通じてお伝えしていきます。興味のある方は地盤工学会のホームページ http://www.jiban.or.jp/ のTC190国内専門委員会の審議状況をお尋ねください。 |