去る7月5日、四谷区民ホールで「不動産取引と土壌汚染セミナー」が開催されました。本セミナーは、土壌汚染をめぐる様々な課題のなかで、今最も注目を集めている不動産取引について、実務的な面から対応しようという意欲的な企画に基づくものです。 土壌汚染対策法の施行以降、土壌汚染の有無が不動産取引においてどのようなリスクをもたらすのか、実際にどのような問題が生じているのか、売買契約上どのような点に注意したらよいのか、等々、当事者にとってはわからないことだらけというのが現状でしょう。今回のセミナーではこれらの疑問に応えるために、マンション事業や不動産仲介事業を円滑に進める事業者の立場から、土壌汚染による紛争を防止・解決する法律事務所の立場から、そして土壌汚染のある不動産の評価について不動産鑑定士の立場から、第一線でご活躍中の3人の講師により話題が提供されました。また、最後には土壌環境センターより土壌汚染対策法に基づく調査・措置技術の概要について、解説が行われました。 |
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会場には当日参加者も含めて200人近い受講者が詰めかけ、数多くの質問が寄せられました。講師の先生からは丁寧な回答がされる中で、専門の方でさえも明快な回答ができないようなデリケートな質問もあり、不動産取引と土壌汚染の関わりが抱えている問題の複雑さ・深刻さがうかがえるセミナーとなりました。 調査・措置を行う側である参加者が、不動産業界・法律家という異なった視点、立場からの新鮮な内容が聞けて良かったという感想がアンケートに寄せられ、今回の企画が好評であったことがうかがわれました。さらに具体的な内容を聞きたいという意見や、東京以外での開催の要望が寄せられました。 |
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講 演 者 |
表題と講演内容の要約 |
江口 孝郎 社団法人不動産協会 副主幹 |
<マンション事業・仲介事業における土壌汚染に対する留意事項> 冒頭で不動産業における土壌汚染対策の基本的な3つの観点(事業リスクへの対処・事業者の役割・不動産取引の安全確保と円滑化)について説明があり、次いで首都圏で大量供給が続いているマンション事業や宅建業者が仲介業務を行う際の留意点について解説がありました。これらは、不動産協会が会員への注意を喚起するという意味で、留意事項として文書化・頒布されていることが紹介されました。 |
佐藤 泉 佐藤泉法律事務所 弁護士 |
<土壌汚染に関する紛争と不動産取引> 実際に生じている土壌汚染と不動産取引にかかわる紛争について、問題点の指摘とその防止・解決策について紹介されました。借地者が原因者である土壌汚染、倒産破産がらみの土地の汚染及び公共事業での土地収用等が例としてあがったほか、土壌法の問題点として自主調査結果の通知義務がない点、3条調査の猶予条項等が指摘されました。また、解決策としてのリスクコミュニケーションの大切さ、汚染発覚時の信頼関係構築の重要性が強調されました。 |
光岡 正史 本町不動産鑑定有限会社 代表取締役・不動産鑑定士 |
<土壌汚染と土地価格との関わり> 不動産の価格評価における「土壌汚染」とは何か?という、最も基本的な部分の考え方の紹介に始まり、土壌汚染の土地減価要因としての基本的な構造の解説や土地評価のケーススタディ(完全浄化後に賃貸マンションを建設する場合と、舗装措置後に月極め駐車場として利用する場合の土地価格)を通して、複雑な土地価格評価の一端を窺うことのできる講演となりました。また、固定資産税評価と土壌汚染、公共用地取得価格と土壌汚染が解説されました。 |
佐々木 憲一 社団法人土壌環境センター |
<土壌汚染対策法に基づく調査・対策の進め方> 土壌法の概要から同法に基づく調査の進め方、同じく措置の進め方が解説され、続いて土壌法の施行状況および同法と不動産取引に関わる調査手法に関する留意点等について説明が行われました。 |