自 主 事 業 活 動 報 告



グローバルネットワーク部会

 部会長 藤岡 庄衛
  当部会は昨年6月に企画委員会の下に位置するものとして、メンバーを公募した結果、会員企業から10名の参加をいただきました。部会の目的とするところは
1.
恒常的な全世界に対する情報ネットワークを構築し、得られた情報をセンターのホームページに公開する。(Take)
2.
我が国の土壌汚染修復に関する情報を、英文でホームページに発信する。(Give)
とし、そのシステムの構築と実施体制は、当部会での調査結果に基づき逐次具体的に進めていくという方針で発足しました。
  その間6回にわたる部会を開催し、その目的・活動方針・各委員の役割分担の決定がなされ、各国での対象となる機関や組織の選定をアメリカ地区、ヨーロッパ地区、アジア地区の3ブロックに分け、その地域特性を考慮しつつ、日本側の対応を考えるグループを加えて計4グループの分業体制としました。
  活動を通じて取得した海外情報に基づきセンター恒例の国際ワークショップの準備、運営への協力、海外視察団訪問先の検討、更には新法の土壌汚染対策法概要の英文化作業等も合わせて実施してきましたが、どちらかといえば地道な情報入手に徹しているのが現状です。
  実際に活動を始めてみて、当初掲げた目的は極めてハイグレードで且つ難しいことと認識しておりますが、これからの高度な国際情報化社会で、当センターとして不可欠な活動であることは明らかで、今後とも継続していく必要があります。そのためには、当センター内の各委員会活動方針との調整、実施体制の強化、予算の確保、英文ホームページの充実、発信情報の統制、更には先進国と発展途上国との対応策のギャップ等、検討、整備、解決すべき点は多々あります。
  来年の新法施行に先立ち、近日中には関連ある政省令、技術基準の改正等々、当センターとして世界に発信出来る情報も増加の一途をたどることになるでしょうし、当部会としても時勢にあわせた活動を臨機応変に進めていきたいと考えています。
  会員の皆様方から、より一層のご協力を頂戴したいと思います。


MNA(科学的自然減衰)に関する研究部会
 部会長 白鳥 寿一
  当部会は、地下水汚染の浄化措置に関する選択肢のひとつとしてMonitored Natural Attenuation(MNA:科学的自然減衰)が海外で話題になってきたことをうけて、
  (1) わが国で、MNAをなるべく詳しくかつ的確に理解する。
  (2) これらの知見を活用しながら、具体的なサイトにおいてMNAを検証する。
  (3) 長期に亘る浄化の結果、もはや経済効果が期待できなくなった状態でかつ環境基準未達の場合に、実質的浄化終了判定の仕組みを提案する。
こと等を目的として、平成11年度から自主部会として活動している。
  (1)については、初年度の検討において、MNAという題材が安易にとられると誤解されやすいものであり、海外でも一時住民側からMNAとはなにもしないことではないかという風潮が広まり、これを払拭するために多大な努力が必要であったという経緯もあった。そのため、この点を考慮し、わが国では曲解されないように、海外学会での発表内容の検討、米国環境省の対応状況やそれを補佐する学識経験者の見解(「Academy of Science 報告書」、「USEPAの MNAに関するガイドライン」)などを検討している。さらに、MNAの定義、適用のための条件などをまとめたうえで、現状では適切な条件のもとで推進している最新海外事情を入れて、年次報告、研究集会、技術ニュースなどを通じ、周辺にも発信をしてきた。
  (2)については、具体的なわが国のサイトにおいてMNAを検証するという作業が必要であり、平成12年度からはMNAが進行している可能性のあるサイトに関して、各自治体との本格的な連携のもとに一連の地下水サンプルの採取・分析作業をはじめた。3箇所のサイトでは、過去のデータ解析、そこでのMNA立証のための他の要解析成分の分析のためのサンプリングを継続しており、NA現象はわが国のサイトにおいても起こっていることを証明するに足るデータが入手できつつあることと、MNAに関連する分析項目についてのプライオリティもついてきたことが成果としてあげられる。また、本年度は各自治体とセンター部会とのMNAに関する合同会議も実施し、その輪を拡げている。
  (3)については、当部会の最終的な目標点でもあるが、MNAが世の中で認識されていくには、いくつかの重要なポイントがあることがピックアップされている。ひとつは長期にわたる科学的データ、もうひとつは周辺住民をも含んだ社会システムである。このように技術的な観点と制度上の観点の両方から検討および提言する必要があり、予定された最終年度である本年度に現状までの成果をまとめ、MNAを実行するためのプロトコールを土壌環境センターとして世に出すことができればと考える。
  最後に、本部会の活動に関して、ご協力いただいている各自治体の関係者の皆様、先生方、また自主部会でもありボランティア的に精力的に活動してくださっている部会員の皆様に改めて御礼申し上げます。


重金属不溶化処理土壌の長期安定性に関する検討部会
 部会長 橋本 正憲
  重金属等による汚染土壌を不溶化処理した場合の効果は、現状、環境庁告示第46号の溶出試験により確認されている。しかし、不溶化処理土壌を封じ込めた場合の長期安定性を不安視する意見がある。
  そこで、この検討部会では、実際の重金属等による汚染土壌を用いて各社現有技術により不溶化処理し、その土壌について各種条件で溶出試験を行い、それらの溶出特性と長期安定性について調査することを目的としている。また、長期安定性を考慮した溶出試験方法を提案することも目的としている。
  平成13年度は、鉛と砒素汚染土壌について調査した。鉛汚染土壌については5技術、砒素汚染土壌については4技術により不溶化処理した。
  溶出試験は、第46号試験の他に、Tessierの5段階抽出法、Toxicity Test and Toxicity Characteristic Leaching Procedure、Multiple Extraction Procedure、Avairability Test、酸添加法(1)、酸添加法(2)、アルカリ添加法(1)、アルカリ添加法(2)を行っている。
  ここで、酸添加法(1)、(2)とアルカリ添加法(1)、(2)というのは、土壌に対して所定量の硫酸あるいは消石灰を添加するものである。この方法は検討部会で考案した試験方法で、第46号試験と同様な操作で溶出検液を得ることが出来る。
  このような溶出試験方法を採用した理由は、不溶化処理土壌の長期安定性に最も影響を及ぼす因子はpHと判断されるためである。つまり、所定量の酸あるいはアルカリを添加して溶出試験をしても、不溶化した重金属が溶出してこないような不溶化処理が行われているかどうかを調べようとするものである。
  もちろん、第46号試験の溶出検液については、重金属等の溶出量以外に、pH、電気伝導率、酸化還元電位などの項目も測定している。
  平成14年度は、六価クロムとシアン汚染土壌について調査中である。六価クロムについては9技術、シアンについては5技術により不溶化処理する予定である。
  そして、これまでの結果をまとめ、現有不溶化技術の効果を明らかにするとともに、不溶化処理土壌の長期安定性を考慮した溶出試験方法を提案したい。
  最後になりましたが、本検討部会の活動にご協力いただいている参加企業の皆様の献身的な活動に厚く御礼申し上げます。