第5回国際土壌・地下水環境ワークショップ (IWGER2002)開催報告 |
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第5回国際土壌・地下水環境ワークショップは、去る1月15日に東京国際フォーラム(ホールC)にて、(社)土壌環境センターの主催で開催された。プログラムのテーマは、新たな局面を迎える日本の土壌環境「法制化に期待する」と題して、日本・米国・ドイツから6名の講師による講演ならびにパネルディスカッションが行われた(下表参照)。このワークショップには産学官から延べ700名余の参加があった。 はじめに、当センター岡安誠会長から「欧米およびわが国の土壌・地下水汚染対策の現状から土壌環境保全対策の推進に役立つ仕組みについて学び論議して、本テーマにふさわしい有意義のあるワークショップを期待する」との開会挨拶があった。引き続き、環境省石原一郎水環境部長から「近年、市街地等で土壌・地下水汚染が判明する事例が増加し、土壌環境保全対策の制度のあり方について社会的関心が高まってきている。本ワークショップを通じて、情報交換と交流を深め土壌・地下水環境保全対策に向けた取り組みが一層推進されることを期待する」との来賓挨拶があった。発表内容の要約は下表のとおりである。 最後に、当センター佐藤雄也専務理事から「本日は、土壌・地下水汚染の法制度化の問題に対して大変有意義な討論を聞くことができ、 まさに時宜を得たワークショップであったと思う。会場の皆さまと共に法制化の実現を希望したい。本日の成果が参加各位の今後の活動に役立つことを期待するとともに、センターとして |
これからも海外諸国との積極的な情報交流を図っていきたい。来年もこのような土壌・地下水汚染問題についてのワークショップを開催したいのでご協力下さるようお願いする」との締めの言葉で盛況裡にワークショップを閉会した。 |
発 表 者 名
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表 題
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要 約
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伊藤 洋 環境省水環境部 土壌環境課長 |
我が国の法制度化の 現状 |
環境省では(1)農用地、(2)ダイオキシン、(3)市街地等における3つの土壌汚染問題に取組んでいる。(1)は20世紀初頭に発生したイタイイタイ病や足尾鉱毒等であり、現在8割方対策が終了している。(2)は平成11年度に特別処置法が制定され、平成13年度に東京都が第1号指定をうけて運用活用されている。(3)は平成14年度内法制度化に向けて、ガイドライン等の作成に取組んでいる。 |
Susan Bromm 米国環境保護庁 サイト環境修復実施部長 |
米国スーパーファンド (有害産業廃棄物除去基金)浄化計画の経験 |
米国の連邦環境法は、汚染者負担の原則に基づいている。 スーパーファンド法の補償責任制度は、汚染に関係あると見なされるどの当事者も責任を負わなければならない。環境保護庁による浄化は、サイトの危険度評価などを定めた国家緊急計画に基づき実施されている。浄化プログラムは、土地の経済的再開発を促進し都市コミュニティーに活気を与えている。コミュニティーは、浄化と再開発の決定に積極的にかかわっている。 |
Dr. Joachim Sanden ドイツ リューネブルグ大学 アカデミック・カウンシル |
ドイツにおける汚染サイトの効果的な浄化と活性化のための法的な枠組み | ドイツにおける汚染サイトは、36万カ所以上存在している。汚染土壌の封じ込めよりも、汚染除去をメインテーマとして取組んでいる。公的な安全を脅かすものに対して予防と浄化を強化している。土地所有者、不動産所有者や移譲者に対しては基金を設け、持続可能な放棄された土地の再利用を推進している。 |
山本 忠 (財)日本不動産研究所 大阪支所 副支所長 |
不動産流通と土壌汚染 | わが国の土壌汚染地は、汚染地の調査手法と評価方法の確立、土壌汚染のチェック体制と担保評価の検討が必要である。さらに、今後グローバル化に伴い不動産の証券化や時価会計化が進むものと思われる。 |
鞍谷 保之 高槻市環境部 環境管理室 室長 |
土壌汚染や浄化における市民や事業者との対話 | 高槻市では市営水道水源井戸の汚染に端を発し、10年以上市民との対話を推進しながら土壌・地下水汚染対策や保全を目指している。正確な情報を発信し、行政・事業者・市民の信頼関係の確保が最も大切である。評価基準に基づく浄化発動基準や終了基準の制定、浄化終了後の土地の有効利用等が今後の課題である。 |
膳場 忠 東京ガス(株) 取締役 用地環境整備 プロジェクト部 |
日本における土壌汚染対策事例 (東京ガス(株)の石炭ガス製造工場の土壌汚染対策) |
東京ガスでは、土壌汚染の可能性のある全ての社有地で平成11年から現地調査に着手し、調査結果を公表し、必要な対策工事を進めている。今後の課題としては、(1)税制面での優遇、低利融資金制度の導入、国による経済的支援策等。(2)コスト面や新たな環境への影響等から非掘削・現位置浄化技術の実用化。(3)安全・健康に対するリスク評価システムの確立、真に必要とされる対策と社会的風土の構築等である。 |
パネルディスカッション 司会:尾形 潤 (土壌環境センター) パネリスト:伊藤 洋氏を 除く上記メンバー |
浄化を促進するために | 会場からの質問も受ける形でパネルディスカッションが行われた。欧米における法制度やリスクコミュニケーションに進展させるための手法について討議された。米国やドイツでは産業界とコミュニティの活動にパートナーシップが確立されており、専門のコミュニティ・コーディネーターを育てて市民参加による対話を通じて汚染浄化に取組んでいる。わが国では土壌・地下水汚染に対する社会のコンセンサスが必要であり、まず法制度化を確立すべきである。 |
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