平成12年12月19日に環境省内に設置された土壌環境制度の在り方に関する検討会から、「土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)」(以下、「中間取りまとめ」とする)が平成13年9月に発表され、その内容に関するパブリックコメントの機会が国民に与えられました。この「中間取りまとめ」は、土壌汚染対策法の検討に向けた基本的な考え方を示したものとして非常に重要な報告であります。土壌環境対策に取り組む会員企業で構成される当センターとして、土壌汚染対策の制度についての意見を表明する絶好の機会と考え、去る10月26日にセンターのパブリックコメントを環境省に提出しました。
土壌の本来機能を阻害する汚染への対策は、汚染土壌対策と汚染の未然防止とに分けられます。 前者に関して、地下水汚染の防止の観点からの土壌汚染対策に関係する制度の枠組みとしては、これまでのところ水質汚濁防止法で与えられています。この枠組みでは、飲料水井戸で地下水環境基準を超えた場合に措置命令が出せることになっていますが、その地下水汚染と原因者との因果関係を証明し、原因者に遡って対策を実施することが非常に困難な構造になっています。また、飲料水井戸で汚染が特定されることは、異常な事態であり、めったに発生しないが、そこまで至らない地下水汚染に係る対策は、措置命令の対象外とされています。
直接摂取に関しては、ダイオキシン類対策特別措置法でダイオキシン土壌汚染に係る対策が制度化されていますが、その他の物質の汚染対策は全く制度化されていません。
後者に関しては、汚染土壌を掘削し、外部に搬出することによって汚染土壌が拡散することによって引き起こされる地下水汚染や直接摂取による新たな環境リスクに対する対策制度は未確立です。
以上のことを踏まえると、土壌環境に関連した国民の健康リスクを管理するための現行法制度では対応していない部分は、次の点となります。
・地下水への汚染要因となる既存の土壌汚染を管理することができない。
・既存の土壌汚染による直接接触による人への健康リスクを管理することができない。
・既存の汚染土を発生源から外部に搬出による汚染土の拡散を管理することができない。
「中間取りまとめ」では、これらについて基本的に考慮されており、このことは十分に評価したいと思います。
「中間取りまとめ」全体に関するコメントとしては、土壌汚染対策の円滑な実施を促進するために、国は土壌汚染対策に係る法制度を早急に整備することを要望しました。
各論部分については以下の観点からコメントしました。
(1) 土壌汚染調査の責任の発生する契機の明確化
(2) 都道府県による履歴調査やそれに基づく土地所有者等への調査命令権限の明確化
(3) 直接接触に関する要リスク管理地としての判定基準値の設定
(4) 土壌汚染地の登録及び公表
(5) 調査・対策の計画及び実施に係る信頼性確保の仕組み
(6) 有害物質の溶出による地下水汚染のリスク低減対策措置に関する発動要件と対策の
完了要件の明確化
(7) 汚染土壌の搬出にともなう新たなリスクを回避するための搬出管理及び低濃度汚染土壌
の場外搬出先の受皿確保
(8) 浄化等の対策に係る支援措置の確立
なお、コメント全文はセンターのホームページに掲載しています。
現在、環境省の中央環境審議会土壌農薬部会の土壌制度小委員会で検討が進められていますが、土壌・地下水汚染の調査・対策に実際に携わり現場を熟知している会員企業で構成される団体としての立場から、今後とも環境省に対して積極的に意見具申していきたいと考えています。
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