〜 事例紹介 〜

橋本市におけるダイオキシン汚染対策


和歌山県環境生活部地域環境課
廃棄物対策室長
岩井 敏明 

プロフィール
1946年 和歌山県生まれ
1969年 大阪大学基礎工学部機械工学科卒業
2001年 和歌山県廃棄物対策室長

 橋本市は、和歌山県の重要な水源である紀ノ川の最上流部に位置し、高野山への高野街道と奈良県に通じる大和街道との交差点に当たる閑静な住宅都市です。富有柿の産地として有名ですが、近年は大阪のベッドタウンとして人口が増加しています。
 大阪府堺市の業者が橋本市で産業廃棄物の処理を始めたのは平成6年頃からですが、平成8年になって、阪神大震災で発生した廃棄物を短期間に大量に持ち込んで、不適正な焼却を行ったため、悪臭、蝿、煤塵等の苦情が殺到し、大問題となりました。
 県は、改善命令による廃棄物の搬入禁止や、焼却施設の使用中止指導と野積み廃棄物の撤去などの対策を行いましたが住民の怒りはおさまらず、「産廃処理場を撤去させる会」が結成され、苦情のレベルから住民運動にまで発展しました。
 平成9年頃から、ダイオキシン汚染が全国的に問題となり、住民の要求に応える形で場内のダイオキシン調査を実施したところ平成12年2月に、近傍の土壌から環境基準をはるかに超える高濃度汚染が検出されました。県は、副知事を本部長としたダイオキシン対策本部を設置し、直ちに対策を開始しました。

 対策は、次の3段階に分けて実施します。
応急対策:飛散防止シートの敷設と立ち入り禁止 措置……直ちに実施
緊急対策:汚染原因除去(焼却施設の撤去) ……措置命令→行政代執行
恒久対策:汚染土壌対策 ……ダイオキシン類対策特別措置法


 現在緊急対策を実施中ですが、廃棄物処理法に基づいて業者に対し措置命令を出したが、応じないために行政代執行に踏み切ったものです。
 焼却施設の解体に伴ってダイオキシン汚染物が発生しますが、これを別の場所に運搬して処理すれば、輸送経路周辺と処理工場周辺の住民からの反発が予想されましたので、現地で無害化処理することとし、その技術としてジオメルト工法が採用されました。国内でのダイオキシン汚染物の現地処理は初めてのため、住民からは安全性や環境への影響について強い懸念が出されましたが、最終的には県と、住民、委託業者の三者が環境保全協定を締結し、5月初旬に着工し9月初旬に終了しました。
 緊急対策(汚染原因の除去)は本年中には完了する見通しですが、恒久対策(汚染された土壌の対策)につきましては、現在、着手準備中です。

汚染範囲確定(土量)
  1,000pg超4,055m3、内3,000pg超 708m3
無害化処理技術
  特許、業界誌、学会誌、インターネット等から情報収集
飛散流出防止技術
  現地の地質、地下水調査から必要な対策ケースを選定


 和歌山県では、土壌汚染対策は初めての試みとなります。今回の緊急対策を実施した経験から、新しい技術の導入について住民の理解を得るには、ガラス張りの情報公開が最も重要であることを学びました。処理中の些細なトラブルも上司に報告後直ちに住民に連絡し、同時に報道機関に資料提供するという手順で、積極的に、迅速に情報を公開しています。