海外視察調査団報告 |
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土壌環境センターの自主事業の一つである海外視察調査団の派遣は、今年で通算5回目を迎え、例年の行事としてセンター活動のなかに確実に定着してきている。 今年はテクニカルアドバイザーに和歌山大学の平田健正教授をお迎えし、センター参加企業17社、計20名の調査団が編成され、第7回FZK/TNO土壌汚染会議(Conference on Contaminated Soil)を中心に視察、調査を行ってきた。 土壌汚染会議、通称「ConSoil」へは、センターとして平成5年と8年にその第4回、第5回に調査団を派遣してきており、今回は3回目の参加である。 参加登録者数は総計740名、内訳はドイツ300、イギリス80、オランダ80、ロシア30、日本24、その |
調査団 団長 塚原 伸一郎
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他で参加国数は34であった。アジアからは日本の他、韓国、台湾、フィリピン、中国から各1名の参加があった。 (1)日本と異なり廃棄物を焼却処分することの少ない欧州での事情もあると思うが発表の中にダイオキシンの 話がほとんどないのが意外であった。 (2)会場内のセッションとは別に、大会組織委員会主要メンバーと情報交換、懇親の場を持った。席上、ドイツ の法規制の現状として複数の環境基準のもと、発動基準、浄化目標、あるべき姿の哲学が現実的かつ合 理的に組み立てられているとの実感を得た。 (3)テクニカルツアーは9カ所を各自分担して参加したが、過去の負の遺産の清算に気が遠くなるような年月 と費用がかかる実態を垣間見てツケの恐ろしさを改めて痛感した。 (4)市長主催のレセプションには、日本からは平田先生と私の2名が招待され出席した。 (5)平田先生を中心に、ConSoil 2000に参加していた日本からの現地留学生との意見交換、懇親の場を持ち、 大変に盛り上がった。 今回日本からの発表はポスターセッションが1件のみの寂しさで、大会組織委員会からも会議への参加だけでなく、積極的な発表や、ケーススタディーなど情報発信への熱い期待が寄せられたことを付け加えておく。 東西ドイツが統一して以来、10年が経過したが、今回の訪問を通じて痛切に感じたのは継承した遺産の修復と保存さらに新しい時代への巨大な再開発事業を国家挙げて粛々と行っていることであった。またその間、計画に関する情報開示の徹底とその自信をベルリン市の広報部署を訪問した際にも改めて実感した。 今回、テクニカルアドバイザーとして調査団に御参加いただいた和歌山大学平田先生の総評を御紹介する。 |
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ConSoil 2000に参加して | ||
和歌山大学 システム工学部 平田 健正
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ドイツ・ライプチヒで開催されたConSoil
2000に参加した。KZK-TNO会議として1993年にベルリンで開催されたContaminated Soil 1993以来、オランダ、スコットランドと論文を発表していたが、今回は土壌環境センターのミッションアドバイザーとして、論文発表の緊張感から開放された海外出張であった。ConSoilは、アメリカを除けば世界最大規模の土壌・地下水汚染問題を扱う国際会議であり、最新の研究成果や対策の動向に触れられる好適な機会である。これまでは参加をするたびに新しい技術に触れ、また新しい制度に接して、わが国の土壌・地下水汚染対策を考える上で大いに参考となった。 ConSoil 2000では、口頭発表、ポスター発表やUSEPA特別セッションに、新たにカントリセッションが加わるなど、到底全ての会議に出席することは難しい。そのため地下水汚染対策を中心に、それもnatural attenuationの取り扱いに興味を持って聴かせていただいた。その中に、natural attenuationには二つあり、一つは本来自然の持つ生物・化学的分解や希釈による濃度減衰、今一つはモニタリングを伴う対策としての減衰、として定義している英国の発表が興味深かった。つまり対策としてnatural attenuationを導入するのであれば、モニタリングはもちろん、少なくとも地下水流れ方向の2断面で物質収支を取り、濃度減衰の程度を明らかにする必要があることを強調していた。このことは、私どもがこれまでにも指摘していたとおり、natural attenuationを導入するには単にモニタリングを継続するのではなく、どれくらいの期間で修復目標を達成できるのか、ある程度の見通しを得ておく必要のあることを示唆するものであろう。また修復技術については、酸化剤による強制酸化、反応壁、エアースパージング、微生物分解やそれらの組み合わせなど、バリアとしての対策やメンテナンスフリーとなりうることを期待した試みなど、わが国の対策手法や技術開発の動向と合致する傾向にあった。 こうした技術開発動向に加えて、ConSoil 2000組織委員会の主要メンバーであるドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアの方々と親しく懇談できたことも大きな収穫の一つである。わが国からは20名を超える規模で参加しており、組織委員会から敬意を払って戴いた結果であろう。 ConSoil 2000全体をとおしてみると、現在のわが国の修復技術開発は欧米と肩を並べるレベルにまで向上していると考えられる。これにはConSoilを始め土壌環境センターが主催している国際会議など、欧米からの協力や支援が大きな力になっていることは疑いがない、こうした協力に応え、経済力ある国として応分の責任を果たすためにも、わが国の技術開発レベルや実証試験結果などを積極的に発表することが望まれる。 |