局 長 挨 拶

  

環境庁水質保全局長  遠藤保雄


    ご紹介いただきました環境庁の水質保全局長の遠藤でございます。総会開催にあたりまして一言ご挨拶申し上げます。土壌・地下水汚染につきましては、まさに現代社会のストック汚染ということで今後きちんとした対策を一層拡充していかなければならないと思います。それに関連いたしまして、今会長のご挨拶にもありましたように、当センターによる国際土壌地下水環境ワークショップ開催、あるいは昨年に策定いたしました調査対策指針の策定作業への様々な技術的ご貢献、さらに昨年東京ビックサイトにおける技術的なフェア開催に尽力されるなど、日頃のセンターの活動に対して深く敬意を表したいと思います。
 また、昨年から今年にかけて、ストック汚染に関連するいろいろな予防手法的な法案が成立いたしましたので簡単にその施策展開を振り返ってみたいと思います。
一つはPRTR法です。御存知のようにPRTRといいますのは、化学物質の移動登録制度であり、先進諸国ではかなり整備されてきているわけですけれども、我が国におきましても通産省と環境庁が連携いたしまして各企業によってどういう化学物質がどれだけの量環境中に排出されたか、また、廃棄物にどれだけ移行したかということについて、情報を管理公開することにより、へたすればストック汚染になるところの化学物質についての使用を皆様方に合理化していただくというものです。それぞれの企業レベルでもきちんとデータを整備することにより全社的に点検していただきまして、化学物質の排出量を少なくしていただくという効果を私どもは期待している訳でございます。
第二の法制度的なものといたしましては、今年1月15日に施行されましたダイオキシン類対策特別措置法でございます。これにつきましては、ご案内のとおり昨年の2月に所沢でのダイオキシン汚染という報道がございまして、いろいろな情報の混乱が生じました。そして、その問題を契機としまして非常に全国民的な関心の高まりがございまして、私どもも全省庁的に取り組み、ダイオキシン類の環境基準あるいは排出基準を定めまして、大気、水、そして土壌につきまして対応していくことにしたものでございます。これらの基準制定過程におきましては、土壌環境基準や対策要件のとりまとめにあたり、本センターからパブリックコメントの時にご意見をいただきまして深く御礼申し上げたいと思います。これにより、ダイオキシン類の排出を徹底的に抑制していく大きな手段ができました。併せてダイオキシンがストック汚染化した土壌についても、都道府県知事がそのエリアを定めて、対策していくという手法も導入されました。これについても、皆様にご協力を賜りたいと思う次第であります。
第三は、今通常国会におきまして循環型社会を形成していこうという各種法制度が成立いたしました。これは、先ほどのダイオキシン類汚染対策特別措置法がある意味で対症療法的な手法であるとした場合に、今回の循環型社会形成を目指した法制度というのは、より根本治療と言いますか、抜本的な治療を狙ったものです。先ほどPRTR法に関連いたしまして、化学物質の移行の一つの形態に廃棄物があると申し上げました。そこで、この廃棄物を、先ずいかに減らすかということですね。第二に出てきた廃棄物にはゴミとするのではなくて、いかに資源として利用していくか、こういう考え方の転換でどうしても資源利用が出来ないものにつきましては熱回収。そしてそれもできないものにつきましては環境に支障が生じないよう適正に処分する。このようにして最終処分場に持ち込まれる量を極力少なくしていくという戦略を描いています。法制度としては、一つは循環型社会形成推進基本法というものを成立させていただきました。この中では、拡大生産者責任と申しますが、製品の製造段階や使用段階での環境配慮だけでなく、製品が廃棄物となることを抑制する、あるいは廃棄物となった物についてリサイクルしやすい様な取り組みを助長するという考え方の一般原則を確立しております。今国会で再生資源利用促進法が改正されましたが、この改正でも拡大生産者責任の考え方がこれまでより充実・強化された規定が導入されました。更には廃棄物処理法が改正されまして、廃棄物の流れを最終処分段階まで把握できるような管理票、マニフェストシステムの徹底と強化を図る。そして、その扱いをおろそかにした者には排出者に原状回復責任を厳しく追及するという法制度の拡充が図られました。また、不法投棄の約9割が建設廃材でありますが、今までのような一括解体から分別解体してコンクリート、アスファルト、木材に分けて資源化を図っていくということを狙いました建設廃材のリサイクル法も成立いたしました。一方、食品廃棄物、これは概ね2000万t排出されており、そのうち、家庭から1000万t、業務用の製造・流通工程から1000万tですが、業務用製造工程からの廃棄物1000万tを肥料とか飼料にリサイクルさせていこうという食品廃棄物のリサイクル法も成立いたしました。これらの法律を成立させることによりまして今後廃棄物を減らします。一番私共懸念しております問題は、最終処分場が満杯になりまして、これが50年後、100年後には一般の土地に変わってしまうわけですね。すると、その時ストック汚染というものが将来に大きなツケをもたらさないようにすることが非常に重要であるという観点から、私共はこれら法案を非常に重視した訳でございます。
 言い換えますと、ストック土壌汚染の問題の発生源というのは廃棄物の最終処分場、あるいは日本の戦後の経済成長を支えた重化学工業の跡地、あるいはハイテク産業や都市に内在する中小企業の跡地等があるわけですが、それにつきましては昨年1月に改定させていただきました土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針の運用によりまして実態をきちんと把握し、そして発見された場合には何がベストな、あるいはセカンドベストな手法なのかということを検討した上で対策に取り組んでいただくという方向を追求していきたい。更には、これで不十分であるならば、どのような情報の管理システムが必要なのか、またどのような浄化のシステムが必要なのか、そういう議論を深めてまいりたいと考えているところです。
いずれにしましても、今後とも本土壌環境センターと環境庁二人三脚で、このストック汚染問題に対応してまいりたいと思いますのでよろしくお願い申し上げます。簡単ではございますが一言挨拶に代えさせていただきます。