局 長 挨 拶
環境庁水質保全局長

遠 藤 保 雄

   平成11年度の総会開催に当たりまして、一言ご挨拶申し上げます
   まず、環境に関する最近の情勢について申し上げますと、国会、地方公共団体、民間の方々からの、土壌汚染問題、地下水汚染問題についての関心が非常に高まっているところであります。昨年の夏、トリクロロエチレンなどによる地下水汚染が大手電気・電子メーカーの事業所で発覚いたしまして社会問題となり、それ以降、地方公共団体の実態が広く把握されつつあり、かつまた具体的な対応が求められている状況であります。
   またダイオキシン問題につきましては、今年2月にテレビで野菜中のダイオキシン汚染問題が報道されて以来、さらに大きく注目されていますが、論議が深化するに従い、過去にダイオキシンが含まれている土地をどう取り扱うのかという、いわゆるストック汚染が問題となってきております。このような土壌汚染問題は、国会等でも産業活性化に関して論議されているところでありますが、工業跡地などの工業用地を有効に活動していくなかで、工業用跡地などの工業用地マンション等へ転換する際、環境保全上の問題はないのか、どのような方法でチェックしたら良いのかというような問題が提起されております。
   以上のように、土壌環境をめぐる関心が高まっているということを認識して頂きたいと思っております。
   さて、土壌・地下水環境保全に関する調査・対策技術につきましては、土壌環境センターを核といたしまして、いろいろと調査、検討をお願いしているところです。本年1月には、土壌・地下水汚染の調査対策技術のガイドラインとなります。「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」の全面的改訂を行うことができました。この指針につきましては、さらなる周知・徹底に向けた取組みを推進していく必要がありますが、土壌汚染対策については国会でも議論が行われており、もっと実効性のある対応がなされるべきだとの強い意見が出されております。この実質的な発表によりまして民間や地方公共団体においての関心が高まり、土壌汚染の取組みに対して強いニーズがあることを痛感している次第であります。
   つぎにダイオキシン問題でありますが、環境庁では、平成10年1月にダイオキシン類の実態調査を開始しております。また、昨年の11月にが「土壌中のダイオキシン類に関する検討会」において、居住地等における土壌中のダイオキシン類に関する暫定ガイドラインとして1,000pg-TEQ/gが提案されております。
   今後、このガイドラインについて本格的な検討に入っていくこととしておりますが、さらに現在、今国会においてダイオキシン類特別措置法案の最終的な検討が行われており、概ねまとまりつつあるというのが現況であります。それによりますと、水・大気・土壌環境のうち土壌につきましては、環境基準を超えた地域があれば、そのうちの要件を満たすものを対策地域に指定してダイオキシン類土壌汚染対策計画を策定するという条文が織り込まれております。今後どう取り組んでいくかが重要な課題であります。
   また、大阪の能勢町の焼却施設に見られる如く、ダイオキシンによる土壌汚染は確実に存在しており、適切な対応が求められております。環境庁では、現在、ダイオキシンによる汚染土壌の浄化技術の開発に取り組んでおり、技術募集を行っている段階であります。これにつきましては産官学の連帯が問われているところであり、その成果には、関係各方面から多くの関心が寄せられることと思います。
   さらに、今年1月には、土壌環境センターと環境庁、神奈川県の協力によりまして、第2回国際土壌・地下水環境ワークショップが横浜市において開催されまして、参加者は入場を断る程の盛況で、一般国民からの関心の高まりも痛感いたしております。
   これらの状況を踏まえまして、今後とも土壌環境センターと環境庁が二人三脚となって土壌環境の保全に努めていくことがますます必要であります。今後ともよろしくお願いいたしますと同時に、土壌環境センターの今後の益々の発展を祈念いたしまして、私のご挨拶といたします。