土壌環境センター2回目の米国視察調査を昨年11月に実施した。実質の活動日程5日間の中で4都市6カ所の視察・訪問を精力的にこなし、短い期間ながらも米国の実状の一端を垣間見た思いがする。それらは本年3月に作成・配布した報告書及び同時に開催した報告会の中で発表してあるが、再度紹介してセンターニュース記事としたい。
今回の視察調査は、極力サイトでの浄化作業自体に焦点を合わせたため4つのサイト視察に加え、浄化サービス会社1社、EPAの研究所も訪問した。また参加人員はセンター会員企業の11社11人(団長は、清水建設(株)の藤岡庄衛氏)に事務局1人、添乗員1人を加えた総勢13人であった。
米国の実状1つ目は、汚染のサイトの登録システムが完備されていることである。例えば、ジョージア州の環境部で入手した『HAZARDOUS
SITE INVENTORY(HSI:有害サイト一覧)』によると、州レベルではあるが米国における汚染サイト登録システムが1998年7月1日現在で400の有害サイトが1サイト1頁1葉で、サイトの住所(地図入り)、土地所有者の名前と住所、規制物質名と健康・環境への影響、浄化の現状等がリストアップされている。サイトは1年ごとに見直されており、毎年7月に最新版のHSIが州から発刊され、郡毎の上級裁判所に配布されている。これが米国で最も保守的と言われている南部ジョージア州の状況である。
2つ目は、有害化学物質で汚染された工場跡地、いわゆるブラウンフィールド(Brownfields)の再開発が活発化していることである。環境保護と地域活性化との両立を図るために、行政(連邦、州)と民間企業が協力してプロジェックトを計画した成功例が報告されている。工業団地跡地『Industri-Plex
Site』、及びサイト視察W:製鉄所跡地『Former Kaiser Steel Facility Site』の中で詳細が紹介されている。同様のプロジェクトが全米州知事会議でも報告されていることも判明した。
一方、多大な浄化努力にもかかわらず、浄化目標の達成が不可能と判断された事例も数々あり、その反省に基き、人の健康や環境保全に支障がなく、時間がかかっても浄化目標を達成し得ると判断される場合には、Monitored
Natural Attenuationの適用も可能であると考えられるようになっていることが判明した。これは汚染現場の特性把握、リスク評価、浄化法及びモニタリング法の検討、状況変化の対応策等を必要条件として実施することになっており、全くの放置とは異なる極めて現実的な対応策である。
最後に、今回の訪問に当たり、多大の便宜と積極的な協力を賜った訪問先関係者の方々に心から感謝を申し上げる。
(HPでの追記:報告書の全文はこちらまで。)
|