去る平成11年2月15日(月)に、東京都品川区の立正大学において(社)土壌環境センター主催による「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針の改訂に関する技術講演会」が開催された。
平成6年11月策定の「重金属等に係る土壌汚染調査・対策指針及び有機塩素系化合物に係る土壌・地下水汚染調査・対策暫定指針」が改訂され、本年1月29日付けで環境庁より「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」及び同運用基準として発表された。本技術講演会は、今回の改訂に伴う趣旨、改正内容等を関係者に早急に理解して頂くことを目的として立案・企画されたものである。
暫定指針施行から4年、土壌・地下水汚染に係る社会的認識の高まりの中での指針改訂であり、関係者の関心は高く、さしもの広い立正大学の講堂も満員となり、折り畳み椅子を並べる程の盛会となった。当日の出席者数は、自治体からの出席者25名を含み、585名(会員271名、非会員314名)であった。また、当センターが準備した1200部の「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針及び同運用基準」は予約分も含め当日閉会までに完売となった。
講演会は、当センター美坂康有常務理事の司会のもとに、児玉利昭専務理事の開会挨拶により始められた。環境庁水質保全局企画課地下水・地盤環境室の安藤茂室長からの挨拶と指針概要の説明があり、続いて同局土壌農薬課の藤倉まなみ課長補佐による改訂指針の内容についての具体的説明があった。その後、休憩を挟んで当センターの対策指針WGのリーダー峠和男氏とサブリーダ−の前川統一郎・今村聰両氏による指針改訂に伴う技術的解説があった。最後に、講演者を壇上に迎えて会場の出席者との間で熱心な質疑応答が行われ、当センターの伴健一郎広報・教育委員長による閉会挨拶をもって3時間30分に及ぶ技術講演会は盛況裏に終了した。
今回の指針改訂の概要は次の通りである。
(1)名称を「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」とし、主要な事項を取りまとめ、細則を運用基準とした。
(2)対象物質に共通する総論を創設するとともに、「有機塩素系化合物等」を「揮発性有機化合物」と名称変更し、農薬の5項目を追加(1,3‐ジクロロプロベンを揮発性有機化合物へ、有機燐、チウラム、シマジン、チオベンカルブを重金属へ追加)した。
(3)地下水環境基準の設定に伴い、重金属等に係わる地下水汚染について指針の対象とした。
(4)土壌・地下水汚染の調査・対策の進め方について、契機、目的、主体に応じ1.地下水汚染契機型、2.現況把握型、3.汚染発見型に分類し、それぞれの場合ごとに調査の進め方等についての考え方を示した。
(5)公有地等管理者又は都道府県等の指導を受けた事業者等が自主的に調査を実施した結果、土壌・地下水汚染が判明した場合には、汚染の拡散を防止する観点から、その旨を都道府県等に連絡することが望ましいこととした。
(6)簡易測定法によるスクリーニング調査も目的に応じて使い分けるよう示した。
(7)対策については、重金属等に係る手法として、封じ込めに加え、対象物質の除去(重金属の分離又は化合物の分解)を位置づけた。あわせて、対策の選定の考え方、複合汚染の場合の留意事項等を示した。
今回の指針改訂にあたって、(社)土壌環境センターでは、平成8年度より環境庁から「調査・対策指針検討調査」を受託し、同庁の指導のもとに会員企業の知見を結集して指針改訂の作業に取り組んできた。本紙を借りて環境庁水質保全局及びご指導頂いた委員会諸先生方、並びに改訂作業に取り組んで頂いた皆様にお礼を申しあげます。
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